健気な男の写メに写っていた「ドラえもん」

2014年11月30日 16時00分

日米野球で来日したクリス・カーター
元局アナ 青池奈津子「メジャー オフ通信」

 

【クリス・カーター外野手(アストロズ)】威圧感たっぷりの風貌とは対照的に、口数が少なくとてもシャイ――。それが今年の日米野球で来日したクリス・カーターの素顔だ。

 

「僕にはアジアの血が流れているんじゃないかって両親たちも冗談で言うくらい。自分でもいろいろと調べてアジアン料理を作ったりするよ」

 

 そう話す彼の口元には笑みが漂う。穏やかな性格の持ち主であることが自然とうかがえた。

 

 だが、来日中の彼からはどうしても「寂しさ」が消えなかったのも事実。実際に第1戦が行われた大阪でも心斎橋を一人で歩いていたクリスにばったりと遭遇したことがあったし、チーム宿舎での朝食も誰もいないテーブルで一人ポツンと食べていた姿を何度か見た。家族や恋人を連れてきた“メジャーリーガーご一行”はスタッフなども含め総勢139人。その中で、単独行動が常に目立ったのは彼だけだった。

 

「日米野球はラスト・ピック(最後の選出)だったからね。(来日できる友人の)誰も都合がつかなかったんだよ」

 

 そう、この日米野球でクリスは最後の最後に選ばれたメンバーだったのだ。そんな彼を見ていて痛感させられたのは、浮き彫りになった「日米野球」というスポーツビジネスの難しさである。

 

 実を言えばMLB(メジャーリーグ機構)側は大会開催が正式発表される直前の今夏前から、ざっと150人近い候補の選手宛てに日米野球への参加を依頼する内容のメールを送っていた。だが「もうシーズン半ばになろうというのに、11月の話をされてもなあ…」というのがメジャーリーガーたちの心理。中には悠長に構えて返事をしない選手もいた。所属チームから「NO」を突きつけられたりするなど候補メンバーは二転三転。結局、MLBオールスターの全メンバーが正式に決まったのは日本出発の2日前というドタバタぶりだった。そうした中で「ラスト・ピック」という代替メンバーとしてオファーがかかったのだから、参加を引き受けたクリスも本音はきっと複雑だったはずだ。それでも「日本に来たかったし、全然大丈夫。楽しいよ」と白い歯を見せる彼の姿は、とってもけなげに映った。

 

「青いキャラクターの人形を妹が好きだったから買ったんだけど、何か分かる?」。そう照れ臭そうに言いながらケータイをサッと取り出すと“写メ”に写っていたのは「ドラえもん」の人形だった。

 

 最後に「日本大好きだよ。今度は旅行でのんびり来る」とボソッと語ったクリス。せわしない編成となったMLB選抜のメンバーだが、彼が嫌な顔ひとつせずに日本を楽しんでいたのはせめてもの救いだった。

 

 ☆クリス・カーター 1986年12月18日生まれ。27歳。米カリフォルニア州出身。右投げ右打ち。193センチ、111キロ。2005年のドラフトで指名されたホワイトソックスへ入団。その後アスレチックスへ移籍し、10年8月9日のマリナーズ戦でメジャーデビュー。13年2月にアストロズへ移籍し、開幕戦に「3番・左翼」で先発出場。以降、レギュラーに定着している。今季はリーグ2位となる37本塁打をマーク。大ブレークの予感を漂わせている。