阪神が“金子余波″に戦々恐々としている。ポスティングシステムによるメジャー移籍を目指していたオリックス・金子千尋投手(31)が国内FA権も行使した。阪神も補強候補の最上位にリストアップしていただけに動向を注視しているが、その一方で国内FA権とポスティングシステム併用という“抜け道″を駆使した影響を懸念。未来のエース・藤浪晋太郎投手(20)の2018年オフの流出につながる問題に発展することを恐れているのだ。

 金子が国内FA権を行使したことで阪神にも入団交渉できるチャンスが生まれた。開幕から先発投手の駒不足に悩まされ、現段階でも課題を克服できるメドは立っていない。シーズン中から球団フロントは金子について「国内では間違いなくナンバーワンの投手」と高く評価していた。

 その“恋人″がFA市場に出てきたとなれば迷わずにアタックしたいところだが、球団幹部は「金子サイドの真意がつかみきれない。彼の本命はメジャーという話も聞いている。国内球団に移籍するという可能性があるなら動くのだが…」と今後も調査を進める方針だ。

 さらに、今回の金子のFA宣言は阪神にとって悩ましい問題を再燃させる危険もはらんでいる。球団関係者は「今回の国内FA権を行使した上でポスティングシステムの適用を求めるというやり方は完全に想定外。今後、制度のあり方を再検討しなければいけない。特に選手会はポスティングシステムには一貫して反対。(現在国内8年、海外9年の)FA権の取得期間をメジャーと同じ6年間にすることを主張している。今回を契機に改めてFA権の大幅短縮を求めてくる可能性は高い」と不安をもらす。

 昨オフに最高額の入札金を提示した球団が独占交渉権を獲得するという従来のポスティングシステムから新制度に移行している。新たに入札金の上限を2000万ドルと設定。上限額を入札した全球団が移籍を希望する選手と交渉できるようになった。しかし、労組・プロ野球選手会は移籍を求める日本人選手に不利な状況は変わらないとして新制度にも反対。今後もFA権の取得期間の大幅短縮を求めていく方針を確認していた。

 今回、再び現行のFA制度とポスティングシステムが共存する状態では“穴″があることが浮き彫りになった。選手会側が改めてポスティングシステムの廃止、FA権の取得期間をメジャーと同じ6年間に短縮することを求めるのは確実で、実際に選手会関係者も「選手の権利を守るためにはFA権の短縮がベスト。これを求めていく姿勢は変わらない」と話している。阪神サイドも「制度に不備がある以上、選手会の動きは無視できない」とFA短縮の可能性も十分にあると覚悟している。

 もしFA権の取得期間がメジャーと同じ6年に短縮されれば、藤浪は最短で4年後の2018年シーズンにFA権を取得することになる。藤浪はメジャーへの興味を否定しているが、球団関係者は「今はまだ将来的にメジャーがどうこうという話は出ていないけど、実際にFA権を取得すれば、いろいろなことを考える。このまま順調に成長すれば当然、次のステージということも視野に入ってくる。選手がFA権を取得すれば、球団側はどうしようもない」と頭を抱えているのだ。

 将来のエース候補が4年後に早々と移籍という事態は何としても避けたいところ。金子自身はもちろん“余波″の動向から目が離せない状況になっている。