楊枝秀基のワッショイ!!スポーツ見聞録
【中村紀洋内野手(41)】
DeNAから戦力外通告を受けて、他球団からのオファーをひたすら待つ日々が続く中村紀洋内野手(41)。シーズン終了後、自宅のある芦屋市内に戻り、西宮市内の施設を利用するなどしてトレーニングを継続し、体形、体調をキープしているが、今の心境は…。中村の親友でもあるスポーツライター・楊枝秀基氏(41)が、その本音に迫った。
――現在もトレーニングを続けている
中村:自宅の近くでランニングするとか、できることをしている感じだね。
――現役続行を希望しているが、現時点でオファーはない。気持ちとしては
中村:自分としては野球を続けたいということが第一にあるので、そこを最優先に考えて先のことを考えて行動している。まずは野球をする環境を与えていただくことが前提としてあって、そうでない限りは先のことも考えられないですから。
――そのための準備はできている
中村:もちろん。ケガしていないですし、プレーするための体力や精神力は整っているつもりです。特に今年はシーズン中からファームにいたわけで、自分としてはギリギリの状態で戦った感覚がないですからね。そういう意味で削られてないわけですよ。来季に向けて消耗していないという意味では、体力を十分に残して来季に備えられているという感覚は強いです。
――来季へ向け「できる自信」というものはあるのか
中村:ありますね。というのは、ファームにいた期間の結果に根拠があるんです。(二軍の遠征に帯同しないなど)最大で2週間は試合に出ないような環境でプレーしていた中で、100打数29安打という数字を残せたことが大きい。
――それは、あくまでファームでの数字だが、意味のあることだったということか
中村:漫然と打席に立って打っていたわけではない。たとえ二死無走者であっても、場面を想定して、自分でゲームをシミュレーションして打っていた。一死三塁なら、このボールを外野フライにするとか、一軍の試合でその状況に応じた打撃をすることを心がけていました。
――自らに求められているものは何かということを意識していた
中村:現実的に自分がどこかのチームでプレーするとなれば、代打での出場になる可能性が高いと思うんです。そうなると、チャンスでの打席でいかに得点につなげるかということが大事になってくる。そうであれば、その場面を想定して打席に臨むことが当然ですし、チームに必要としてもらうために、そういった技術があるということを示す必要があると思ったわけです。
――そう考えるに至った経緯は
中村:中日時代に一緒にプレーした立浪さんの存在が大きいですね。代打の切り札としての生きざまが本当に勉強になりました。どんな場面で代打として出場しても自分のタイミングでスイングできていた。4、5回からベンチの裏に入って、室内で打撃をしていたんですが、通常の半分の距離でマシンを打っていたはずだと思うんです。でないと、最後の勝負どころで、一発で自分のスイングをできるはずがないですから。
――前回、DeNAに移籍した時にはシーズン途中の5月から加入したが、今回もとにかくオファーを待つ覚悟か
中村:前回とは状況が違う。年齢も違うわけですし、自分には家族がありますから、いつまでも待つ、というわけにはいかない。どこかの時点で区切りをつけようと思った瞬間に(現役を)辞めようということになると思う。その後にオファーをもらっても野球ができる気持ちになれるかと言われれば、できないと思う。
――自分の中で期限があるということは分かったが、2000安打、400本塁打の実績があるノリにはこのまま終わってほしくない
中村:過去のことはもういいんです。こういった環境の中で、今の自分を必要としてくれる球団を待ちたいという気持ちです。
☆なかむら・のりひろ=1973年7月24日生まれ。大阪府立渋谷高では2年夏に甲子園出場。91年のドラフト4位で近鉄に入団。94年9月18日の日本ハム戦(藤井寺)でサイクル安打。2000年には39本塁打、110打点で2冠王に輝いた。02年オフにFA宣言して近鉄残留。05年1月にポスティング申請しドジャースとマイナー契約を結んだ。06年にオリックス入り。ケガに苦しみ、07年シーズンの契約がまとまらず、自由契約となり、中日に育成枠で入団。その後、支配下選手に昇格し、07年の中日日本一に貢献した。08年オフに2度目のFA権行使で楽天に移籍。10年に戦力外となり、11年5月に横浜(現DeNA)入り。13年に通算2000安打と400本塁打を達成。14年10月にDeNAから戦力外通告を受けた。
☆ようじ・ひでき=1973年8月6日生まれ。神戸市出身。関西学院大卒。98年から「デイリースポーツ」で巨人、阪神などプロ野球担当記者として活躍。2013年10月独立。プロ野球だけではなくスポーツ全般、格闘技、芸能とジャンルにとらわれぬフィールドに人脈を持つ。昨年12月にアメーバブログ「楊枝秀基のワッショイ!! スポーツ見聞録」を開設し、今年4月2日には神戸・三宮にレストランバー「42」を開業。11月8日にはフォレスト出版から「阪神タイガースのすべらない話」を発売した。