阪神がメモリアルイヤーのリーグ優勝、日本一のためにOBの総力を結集する。来季、球団創設80周年の節目を迎えるものの、肝心の戦力整備は順調とはいえない状況だ。現有戦力の底上げの重要性が高まる中、球団フロントでは最強左腕・江夏豊氏(66)や守備の達人・吉田義男氏(81)をはじめとする歴代OBが培ってきた“財産″に注目。現役選手への伝承を要請する方針だ。

 16日の巨人―阪神OB戦は0―10と完敗に終わったものの、江夏氏と田淵幸一氏の黄金バッテリーが世界のホームラン王・王貞治氏を一ゴロに封じれば、掛布雅之DCが江川卓氏とのライバル対決で左越え二塁打を放つなど仙台のプロ野球ファンを喜ばせた。

 猛虎の歴史を築いてきたOB諸氏。来季、球団創設80周年を迎えるにあたって球団フロントも、OBの力に注目。その第1弾として来年2月の春季キャンプで江夏氏を臨時コーチに招くプランを温めている。この日、OB戦に参加した中村GMは「まだ交渉はしていないが、OBの皆さんに一翼を担ってもらいたいと思っている。80周年に向けて、そういう構想はある」と明かした。江夏氏も「タイガースを強くするためにお手伝いすることだけだ」と要請があれば協力を惜しまない意向を示した。

 さらに、海外FA権を行使した鳥谷がメジャー移籍すれば、ポスト鳥谷という大きな課題が生まれる。掛布DCが「まだどうなるかわからないけど、彼も我慢してきた部分もある。もしメジャー移籍が決まったら手を叩いて送り出してあげるべきじゃないか。抜けた穴は大きいけど若い選手のチャンスも広がるし、そういう力が必要になる」と話すように若虎のレベルアップが欠かせない。

 特に遊撃という要のポジションだけに守備力が重視される。そこで名手・吉田氏の技だ。

 球団関係者は「牛若丸と呼ばれた現役時代の守備は素晴らしかったし、指導力という面でもすごい。基本を徹底する指導方法は必ずプラスになる」と大きな期待を寄せている。吉田氏も「我々もタイガースが勝つためにできることはやっていかないと思っている」とバックアップに意欲満々だ。

 打撃でも田淵氏や金本知憲氏、バッテリーでは矢野燿大氏など実績十分のOBがずらりと控えている。もちろんOBの一人が「自分たちの立場をわきまえないと逆に現場に迷惑になる」と話すように、あくまでも選手が最優先。フロントや首脳陣、選手の要請があれば、すぐに“出動″する態勢を整えている。