巨人は13日、都内でヤクルトからFA宣言した相川亮二捕手(38)と初交渉を行った。即決とはいかなかったものの「横一線の正捕手争い」という巨人が提示した条件に相川も納得。近日中にも入団が決まる運びとなった。だが、ここに至るまでには紆余曲折があった。若い人材流出のリスクを冒してまで、ベテラン捕手獲りに動いた決め手は何だったのか。

 約1時間の交渉を終えた相川は、やや緊張した表情で報道陣の前に現れた。巨人側から出席した原沢球団代表兼GMからは「レギュラーのポジションを空けて待っているわけではないが、キャッチャー陣の中で勝負してほしい」とラブコールを送られたという。

 正捕手争い確約を移籍の第一条件としていた相川は「横一線で見てもらってプレーできるところ(球団)を探しているので、気持ち的には、自分が考えているものと一緒だった」と巨人入りへ前向きな姿勢を見せた。

 相川獲得に名乗りを上げているのは現時点で巨人だけ。原沢代表も「手応えはあった」としていることから、今後は具体的な金銭面の条件について決着がつき次第、入団が決まる見込みだ。

 実は巨人が相川獲りに動くまでには激しい議論の応酬があった。フロント内では当初、楽天・嶋が残留を決めた時点で「小林を正捕手候補として、加藤や実松ら中堅がサポートしていけばよい。(来季で)39歳のベテランを獲って、若手を人的補償に差し出すのはもったいない」という声が大勢を占めていた。

 プロテクト枠は28人。本紙が独断で予想したリスト(別表)でも、若手が多数漏れるのは目に見えていたからだ。

 一方、現場からは「長いシーズンを小林にはまだ任せられない。経験ある捕手が必要だ」という意見が上がっていた。

 そんな中、最終的に獲得に乗り出す決め手となったのは、相川の“打力”だった。今オフは矢野が右ヒジ手術に踏み切り、ロペスも退団濃厚。「小林が育つまでの“つなぎ役”ならベテランの方がいい。『右の代打』としても使えることを考えれば、獲っておいて損はない」という考えに一同納得。相川の経験値を高く評価する原監督も獲得を熱望していたことで、フロント側は「レギュラー確約なし」を条件に動くことを決めたという。

「年を取っていることは分かっている。そんな中で、初日にこの場を設けてもらって誠意(を感じた)というか、感謝の気持ち」と神妙に語った相川。この日笑顔がなかったのは、巨人内部の空気と自らに向けられた厳しい視線を感じ取っているからかもしれない。