まさかの国内FA宣言 金子の計算はどこに?

2014年11月12日 16時00分

侍ジャパンで練習する金子

 オリックス・金子千尋投手(31)が11日、今年取得した国内FA権行使を決めた。13日から国内全球団との交渉が可能になるが、これで来季、海外FA権を取得できなくなり、視野に入れていたメジャー挑戦はポスティングシステム以外に道はなくなった。しかし、オリックスの「ポスティングNO」の姿勢は現時点では変化なし。いったい金子はどんなシナリオを描いているのか。混迷する事態に球団内も騒然としている。

 

 金子はこの日の午前中に瀬戸山球団本部長に「(国内FAを)宣言させていただきます」と電話で伝えた。日米野球の日本代表として兵庫・鳴尾浜での練習を終えた金子は集まった報道陣に「FA(宣言)すると決めた。すべての可能性を考えたい。しっかり考えて悩んだ末の結論です。今は日米野球に集中したい。中途半端なままでやりたくなかった」と話した。

 

 期限ギリギリの表明に顔面蒼白なのは瀬戸山球団本部長だ。これまで3度交渉し、電話で「宣言せずに残留をしてほしい」と訴えたが、誠意は伝わらなかった。瀬戸山本部長は金子からFA書類を事前に預かっていたことを明かしたうえで「時間がないので、ひとまずそうさせてほしいということだった。大変ショックだし、残念。本当は書類を破きたかったけど、しょうがないので(NPBに)出した」。メジャー挑戦の思いは「まだ聞いていない」という。

 

「メジャーに行きたいなら1年待ってチームを優勝させて海外FAで行けばいい。それが一番波風が立たない」(チーム関係者)との見方が大勢を占める中でのまさかの国内FA宣言に、球団内にも大きな波紋が広がった。国内FA権を行使すれば、来オフに取得する見込みだった海外FA権の取得は最短で4年後。しかし現時点では宮内オーナーをはじめ、球団はポスティングを認めない姿勢を変えていない。

 

 海外FA権を“放棄”してしまったことで自ら選択肢を狭めてしまったようにも見えるが「球団に揺さぶりをかけているんじゃないか。FAで他球団に行かれること、特にパ・リーグに移られることが球団としては一番困るからね」との声も。国内移籍をちらつかせることでオリックスにポスティングを「YES」と言わせる作戦説だ。

 

 国内FAの場合、移籍先が決まるまでは旧所属先が保留権を持つため、オリックスがポスティングを申請できる。今季推定年俸2億円でAランクの金子が仮に国内他球団に移籍すれば、オリックスが移籍先から手にするのは1億円の金銭補償&人的補償、もしくは金銭補償のみの1億6000万円。一方でポスティングの譲渡金上限は2000万ドル(約23億円)で、どちらが得なのかは一目瞭然だ。とにかく、オリックスが容認すればポスティングと国内FAの併用という史上初のケースとなるが、野球協約上の問題はない。事実上は海外FAと変わらない“裏技”といえる。

 

 一方、メジャー関係者の中では「他球団に移籍して、数年後にポスティングにかけてもらうことだってできる。そういう話ができていることだって考えられる。誰かが後ろで糸を引いているのは間違いない」との密約説も…。ルール上は「国内の他球団に移籍し、1年後にポスティング」も可能で、獲得に10億円近く投じても、金子がけがさえしなければ1年後に20億円近くのバックが見込める「おいしい投資」だ。

 

 先月27日にメジャーへの思いを口にして以来、金子獲得をにらんでいた他球団は静観態勢となり、手を引いていた球団もある。各球団の編成が進む中での国内FA宣言だけに「慎重な性格の金子のこと。何か算段が立ったから、このタイミングになったんだろう」ともいわれている。

 

 金子と親しい関係者は「オリックスにあまり愛着はないようだ。やはり実績の割には年俸(2億円=推定)が安すぎた。巨人に行っていたら、それこそ3億、4億と、もらえていたかもしれないでしょ。評価のことはずっと金子にあったと思う」とし、さらに「以前からメジャー球で練習していてメジャーへの思いは強い。大きくない体でどこまで勝負できるかと考えている。でも同時に怖さも感じているようだ」と明かす。

 

 瀬戸山本部長は「まだオリックスでプレーする可能性がなくなったわけではない。引き続き交渉していく」と粘り強く残留を訴える構えだが、金子の真意はつかめないままだ。