グラウンド内外で明暗分かれた元開幕投手たち

2014年11月10日 16時00分

家族のドラマ性も評価されてTBSの密着取材を受けている東野には獲得に興味を示す球団も

 プロ野球で戦力外となった選手らを対象とした12球団合同トライアウトが9日、静岡県草薙総合運動場野球場で行われ、投手34人、野手25人の計59選手が参加した。シート打撃形式で行われたテストでは、各選手が中日の落合博満GM(60)をはじめとした各球団の編成担当者らの前でアピール。なかでも注目を集めたのは、かつての在籍球団で開幕投手も務めたことのある2投手だが、グラウンド内外で明暗がくっきりと分かれた。2回目のトライアウトは20日にジャイアンツ球場で行われる。

 

 NPB球団をはじめ、メジャー8球団、台湾2球団のほか、国内の独立リーグからも編成担当者がかけつけた今年の第1回トライアウトでは、中日の落合GMが「今日は何も言えないけど、いい選手はいっぱいいる」と話したように“掘り出し物”になりそうな選手が何人かいた。中でも注目を集めたのが、今季限りでオリックスを戦力外になったものの、28歳と若く、2011年には巨人で開幕投手も務めている東野峻投手だ。

 

 シート打撃では打者4人を相手に最速145キロの直球を投げ、2者連続で見逃し三振を奪った。「欲が出てフォークを3連投した。違う自分を見せようと思った」ことが裏目に出て連続四死球もあったが、納得の結果だという。

 

 東野は「引退も考えたけど、家族(杏奈夫人)から『自分の好きなことをやったらいい』と言われた。12月に第3子が生まれるので、まだまだ辞められない」と愛する家族のためにもNPBでの現役続行にこだわっている。東野にはDeNA、ロッテなどの複数球団が興味を持っているようだ。

 

 東野を取り巻く状況には、今年で放送11年目となるTBS系列の年末特番「プロ野球戦力外通告・クビを宣告された男達」も注目している。東山紀之がナレーションを担当し、平均10%以上の視聴率を持つ名物番組が密着する方針だという。

 

 一方、DeNAを戦力外となった左腕・藤井秀悟投手(37)は、いろんな意味で散々な結果となった。先頭打者に四球を与えると、一死後に再び四球。カウント1―1からという難しい状況でのテストではあるが、直球の最速も132キロと不満足な内容で自身の登板機会を終えた。

 

 それでも藤井は「まだ投げられるところを見せたかった。連絡を待ちます」と前を向いたが、ショックだったのはグラウンド内のことばかりではない。ヤクルト時代の01年には14勝を挙げて最多勝に輝き、翌02年と13年のDeNAで開幕投手も務めた。巨人時代の10年には12球団勝利を達成するなど話題には事欠かないが、前出の特番「プロ野球戦力外通告――」からのオファーはギリギリまでなかったという。

 

 藤井は「話が来たのがあまりに直前だったので、今からでは深く取材もできないだろうし断りました」と明かした上で「やっぱり心の支えが犬と猫じゃダメなんですかね」とつぶやいた。バツイチで独身の藤井は家族に密着しようにも3匹の犬と1匹の猫しかいない。夫人が臨月を迎える東野に比べればドラマになりにくい…という面もあったのだろう。

 

 視察したNPB球団から「藤井」の名前は挙がらなかったばかりか、某球団の編成担当者からは「獲得したとしても本人のためになるのか」と第2の人生を勧める声も。トライアウトにはギリギリの男たちの泣き笑いがあふれていた。