阪神がロッテからFA宣言することを表明した成瀬善久投手(29)に速攻アタックをかける。2005年以来10年ぶりのリーグ優勝、1985年以来30年ぶりの日本一に向けて投手補強が重要テーマとなっている和田阪神。FA市場に出ることになった通算90勝左腕獲得を目指し、3年総額5億円以上とエース番号「18」という条件も用意している。しかし、一方で一抹の不安もささやかれている。その根拠は“背番号18の呪い”だ。

 レギュラーシーズン2位から日本シリーズに進出したものの、開幕から投手陣の駒不足に悩まされたシーズンでもあった。先発陣はメッセンジャー、能見、岩田、藤浪の4本柱がシーズン序盤から中5日登板を強いられるなどフル回転。リリーフ陣も絶対的守護神・呉昇桓につなぐセットアッパーの人材不足は深刻な状況だった。

 このため球団フロントでは早い段階で今オフのFA戦線に注目。先発投手の成瀬、リリーフ左腕の日本ハム・宮西尚生(29)の調査を重点的に進めてきた。その中で早速、成瀬が1日にFA宣言することを表明。ロッテはFA権を行使しての残留を認めない方針で移籍が決定的となっている。宮西は態度を明確にしていないが、FA宣言すれば獲得に動く。

 成瀬は07年に16勝1敗、防御率1・82で最高勝率、最優秀防御率のタイトルを獲得しており、先発ローテーションを1年間、任せることができる人材。補強ポイントに合致するとあって、13日の交渉解禁を待ってアタックする方針だ。

 当然、条件も恥ずかしくないものを準備している。今季年俸1億4400万円の成瀬に対して3年間の複数年、出来高も含めれば3年総額で5億円を超える大型契約。さらに、球界のエース番号「18」を手土産に交渉に臨むつもりだ。

 しかし、球団内には不安の声が出ている。成瀬獲得に異論はないのだが、問題は背番号「18」だ。あるチーム関係者は「最近、FA交渉で背番号18を提示して成功したことがない」と指摘する。

 08年オフには横浜(現DeNA)からFA宣言した右腕・三浦大輔の獲得に動いた。この時も3年総額で10億円を超える破格条件と背番号18を用意。一時は移籍に大きく傾きながら最終的に残留した。昨オフは中日からFA宣言した中田賢一の獲得を目指したものの、ソフトバンクとの争奪戦に敗れた。中田にも背番号18を用意していた。

 こんな経緯があるだけにチーム関係者は「18というのは投手にとっては最高の背番号であることは間違いない。ただ、その最高の番号を提示してもウチを選んでもらえないということが続いている。期待が大きいからこそ18というエース番号を用意するんだけど、移籍を考えている選手にとっては重く感じてしまうのかもしれない。背番号18ということで期待度はさらに高まる。熱烈なファンが多いだけにプレッシャーになってしまうこともある」と心配しているのだ。

 別の関係者も「成瀬はロッテでも背番号17だったし、特に18にこだわりがないのなら強調しない方が得策かもしれない」と声をひそめる。阪神以外にもヤクルト、オリックスなどが成瀬争奪戦に参戦する見込みだ。今オフには攻守の要・鳥谷がメジャー移籍する可能性もある。この大きな戦力ダウンを少しでもカバーするためには投手力強化は欠かせない。成瀬の心を引き寄せるためにも大胆かつ慎重にラブコールを送ることになる。=金額は推定=