SMBC日本シリーズ2014は29日、ヤフオクドームで第4戦が行われ、ソフトバンクが阪神に延長10回の末、5―2でサヨナラ勝ちして3連勝、対戦成績を3勝1敗として3年ぶりの日本一に王手をかけた。大ヒーローは劇的サヨナラ3ランを放った中村晃外野手(24)だが、今季パ・リーグ最多安打のタイトルを獲得した帝京高出身の若鷹には意外な一面が…。

 2―2で迎えた延長10回、阪神の守護神・呉昇桓が投じた148キロの石直球を完璧にとらえると打球は一直線に鷹党で埋め尽くされた右翼席へと飛んでいった。3年ぶり日本一に王手をかける劇的なサヨナラ3ラン。普段は寡黙な中村が両手を高々と上げて喜びを爆発させた。

「追い込まれたので、とりあえず何とかしようと思っていた。(呉昇桓の)球筋は頭にあったし、球種も少ないので直球にあわせていた」。中村はそう振り返ったが、声はか細い。ビッグな仕事ぶりとは好対照だった。

 どちらかといえば職人肌。オフの自主トレでもグループ行動はせず、毎年のように西戸崎合宿所でひとり黙々とバットを振り続けている。派手なことが好きではなく、昨オフにはこんなことがあった。

 初めて規定打席に到達して打率3割7厘をマークした中村に、毎年正月にテレビ朝日系で放送されている「夢対決! とんねるずのスポーツ王は俺だ! スペシャル」の目玉コーナーで、ボードゲームの野球盤を実際の球場に再現して行う“リアル野球BAN”への出演オファーがあった。これまで西武・森本ら、とんねるずと同じ帝京高出身のプロ野球選手が次々と出演しており、2007年の高校生ドラフト3位で帝京からソフトバンク入りした中村にも、ぜひ出演してほしいというものだった。

 全国区の番組への出演となれば大喜びする選手もいるが、中村は逆。母校の先輩からのオファーでも首をタテには振らなかった。最終的に断ったのは収録日が選手会行事と重なったからだが「中村は野球そのものでアピールしたいタイプで、派手なことは好きじゃないですからね。先輩からのオファーで断りづらいという気持ちもあったようですが、正直、乗り気ではなかったです」(球団関係者)

 ただ、大舞台で大仕事をやってのけたことで、中村への注目度が昨オフ以上になることは確実。球団としても「今季の中村は最多安打のタイトルを獲得し、チームもリーグ優勝。今日の一発もあった。こちらとしたら、そういう番組にも出てほしい」との思いがある。もしも今オフ、同じようなオファーがあったら、たとえ本人が渋ったとしても今度こそ背中を押されることになりそうだ。