オリックス・金子千尋投手(30)が27日、沢村賞に輝いた。球団初の快挙に「先発投手をやっている以上は沢村賞は目指すところでもあった。すごくうれしい」と喜びを語ったが、一方で注目されるのが今後の去就だ。国内FA権を持つ金子だが、ポスティングシステムによるメジャー挑戦も視野に。これには球団内外で厳しい意見が噴出している。

 プロ野球草創期の名投手、故沢村栄治氏を記念し、シーズンで最も優れた先発完投型の投手に贈られる「沢村賞」の選考委員は堀内恒夫氏、平松政次氏、村田兆治氏、工藤公康氏、北別府学氏。この日、東京都内のホテルで約22分間の話し合い(北別府委員は所用で欠席)を行った結果、最多勝と最優秀防御率でパ・リーグ2冠に輝いた金子の選出を決めた。

 沢村賞の選考基準は15勝、防御率2・50、200投球回、10完投、150奪三振、25試合登板、勝率6割の7項目。今季の金子は登板26試合で191回を投げ、両リーグトップの16勝(5敗)、防御率1・98、勝率7割6分2厘、199奪三振、4完投を記録し、投球回、完投以外の5項目をクリアした。

 15勝を挙げた昨季に続いて安定した成績を残したことも評価され、委員長を務めた堀内氏は「2年続けて、これだけの結果が出てきた。数字は少し足りない部分がありますが、頑張りに僕は敬意を表したい」と説明。工藤氏も「防御率1点台は金子だけ」と絶賛した。欠席した北別府氏も「上回る投手がいない」と金子を推薦していた。

 沢村賞受賞で名実ともに球界ナンバーワン投手となった金子。だが、来季も国内でプレーするかどうかは微妙な状況だ。金子は先日まで渡米してワールドシリーズを観戦。「ファンの熱さが予想した以上だった。刺激を受けた」としたうえで「アメリカの野球を肌で感じるのが大事と思った。雰囲気にも憧れていたし、あそこでやってみたい気持ちはあった。毎年チャンスがあるとは思えない。チャンスがあるなら、そういう選択肢も頭に出てくる。もし行くとしたらポスティングしかないので…。かといって今の時点で100%それを考えているわけではない」と胸中を明かす。

 今季は多くのメジャースカウトが来日し、視察しており、金子もすでに代理人を決めるなど、挑戦を現実的に捉えている。しかし、チーム関係者は「金子は来年には海外FA権を取れるだろうし、その権利を行使してメジャーに行かれたら、球団には1円も入らない。でも今年、ポスティングで行かせたら譲渡金が入ってくるから、球団も悩むところかもしれないけど…」といいながらも「金子は行くのをやめた方がいいと思う。もう球威が落ちてきている。ここ一番でのボールの握りが以前より甘くなって高めに浮くようになっている。明らかに衰えはある。もう精密機械でなくなってきている」と心配そうに話す。

 さらに、あるメジャー関係者は「ローテ候補だから入札されれば上限の2000万ドル(約21億円)で交渉する球団は複数あるだろう」としながらも「金子はスタミナに問題がある。向こうに行っても6月あたりにへたってくるだろう。今年も中5日で投げた試合はいいところがなかったのに、中4日なんて無理。故障のリスクは広島のマエケン(前田)よりある」と厳しい見方だ。

 金子は日米野球にも選出されており、その場で改めてメジャーのレベルを“確認”したい考え。瀬戸山球団本部長は「残っていただきたい。そういった話し合いの場を今後、設けさせていただく」としているが、果たして…。