SMBC日本シリーズ第2戦は26日、甲子園球場で行われ、ソフトバンクが先発・武田翔太投手(21)の好投と主砲・李大浩内野手(32)の一発などで2―1と阪神に快勝。対戦成績を1勝1敗の五分にした。今回と同じ顔合わせで「内弁慶シリーズ」と称された2003年のトラウマから甲子園への苦手意識も心配されていたが、予想に反して(?)虎党の応援マナーが良かったことで鷹ナインはひと安心。本来の粘り強さを発揮し、日本シリーズの風向きを変えた。

「ここで2連敗したら4タテもあるんじゃないか…」。そんな不安も漂っていた三塁ベンチが、初回から活気づいた。先頭の柳田が中前打で出塁すると、今宮がキッチリと犠打を決めて一死二塁。すかさず内川が内角の直球を左前にはじき返して先制すると、4回には4番・李大浩の一発が飛び出した。

 打線に効果的な援護をもらった先発の武田は6回二死まで1人の走者も許さない完璧な投球を披露。その6回に西岡の適時打で1点は許したが、初の大舞台での7回1失点の好投には、秋山監督も「よく粘った。(高卒ルーキーながら8勝した)一昨年もヒュッと(一軍に)上がってきてヒョイヒョイとやったじゃん。いいものは持っている」と目を細めた。

 日本シリーズに限って言えば、前日の初戦も含めて甲子園では阪神に4連敗中だった。それでも鷹ナインは手応えを感じていた。最も警戒していた聖地・甲子園の虎ファンが「思いのほか、品が良かった」(チーム関係者)からだ。

 03年の同カードでは、選手が「まるでパチンコ店にいるようだ」と耳をつんざくような大歓声に悲鳴を上げ、ヤジのエジキにもなった。女性ファンに「ムネリ~ン」と声をかけられた川崎は振り向くなり「何がムネリンや!」と突っ込まれ、当時ルーキーだった和田(現カブス)も「和田言うたら和田豊やろ」と妙な難癖をつけられるなど、練習中から虎党に揺さぶりをかけられた。試合でも死球を与えた投手に「殺すぞ!」の罵声が飛んだ。

 それに比べれば「確かに統率のとれた応援や大歓声はすごいけど、それだけなら『何とかいいところで打って静まり返らせてやろう』というモチベーションにもなる」と、虎党の大声援に鷹ナインはヤル気と勇気までもらっていた。日本シリーズ初登板で初勝利を挙げた武田が「(甲子園は)阪神一色じゃないですか。勘弁してくださいよ。初ヒットのときなんて、点が入ったかってぐらいでしたからね」と笑顔で振り返ることができたのも、虎党の応援マナーが良かったからだ。

 ヤジがなかったわけではない。前日の初戦で2安打した今宮には「いてまうぞ、こら!」の声が飛び、5回途中6失点でKOされたスタンリッジも「ジェイソン、ありがとう!」と虎党に皮肉を言われたが、アウェーであることを考えれば常識の範囲内とも言える。

「前回の阪神は、18年ぶりの日本シリーズ進出だったし、ファンにも『セ・リーグの王者や』という思いもあったはず。今回は2位からの勝ち上がりだし、日本シリーズも9年ぶりだから、03年のようなピリピリした感じもないのでは」と分析するのはチーム関係者。

 互いに本拠地でしか勝てず「内弁慶シリーズ」と言われた前回の対戦では甲子園で3連敗を喫した。しかし、日本シリーズでは南海時代の1964年10月10日以来50年ぶりとなる甲子園での勝利を挙げて“呪縛”からも解放された。「1勝1敗で(福岡に)戻れるのは大きいよ」と秋山監督。本拠地・ヤフオクドームでは、熱い鷹党の声援が待っている。