日本シリーズ 鷹虎決戦プレーバック2003<2>

 業界用語で言うところの典型的な“ハメ取材”だった。ダイエー(現ソフトバンク)の先勝で迎えた第2戦の試合前のことだ。当時の福岡ドーム(現ヤフオクドーム)はベンチ裏の選手サロンが報道陣にも開放されており、そこで取材することも可能だった。

 待っていたのは正捕手であり、主軸打者の一人だった城島健司。あるスポーツ紙に掲載された野村克也氏の評論に目を通してもらい、反応を取るのが狙いだった。

 前日の第1戦で4回に同点弾を放ち、攻守にわたって勝利に貢献していた城島は上機嫌だった。しかし、野村氏の評論を一読するなり表情は一変した。リードを酷評されたからだ。「ホームランを打ったことなんて少しも褒めてくれない」と、ほっぺをプーッと膨らませた。

 城島がすごいのは、文句を言っただけで終わらないところだ。3回に2戦連発となるソロ本塁打を放っただけでなく、捕手としても先発の杉内俊哉(現巨人)とリリーフの新垣渚(現ヤクルト)を好リードし、チームを13―0の圧勝に導いた。

 書いた記事についた見出しは「城島 絶好調の原動力はノムさんの“酷評”」。怖いぐらい読みが当たった一日だった。