2位に7ゲーム差をつけるぶっちぎりのリーグ優勝を決めながら、クライマックスシリーズ(CS)では阪神にまさかの4連敗であっという間の終戦…。屈辱的な敗退から一夜明けた巨人が、早速チーム再生への動きを活発化させている。日本シリーズ進出を逃した責任追及の波が今後、選手へも及ぶことは必至。なかでも一番の“標的”となりそうなのが、CS前に原辰徳監督(56)からキーマンに指名された阿部慎之助捕手(35)と村田修一内野手(33)だ。盟主を支えた屋台骨コンビが、来季は厳しい立場に追い込まれることになる。

 歴史的な惨敗から一夜明けた19日、マシソン、ロペス、セドンの3助っ人が帰国の途についた。だがこの中で残留確実なのは、来季までの複数年契約を結んでいるマシソンだけだ。

 成田空港で取材に応じたマシソンは、守護神として30セーブをマークした今季を「リーグ優勝はうれしかったが、日本一になれなかったのは残念。全体的に言えば不安定なシーズンだったが、監督がクローザーにしてくれたことで軌道修正できたし、自分に自信が持てた」。

 2年契約の最終年となる来季については「いつもより早めに投げ始めて、技術的な部分を確認してからキャンプ入りしたいと思っている」と意欲を見せた。

 去就が注目されるロペスは「今は巨人の一員なので、契約上でも(球団が)権利を持っているうちは、巨人でプレーするつもりでいる。それがかなわなければ、また日本でプレーしたい気持ちもあるが、自分はまだ巨人の一員。今はそれしか考えていない」と語ったが、セドンとともに退団濃厚と見られている。

 そうした状況で、球団は今季DeNAとロッテでプレーしたグリエル、デスパイネの獲得調査を同時進行している。ロペスを切り、キューバコンビの獲得に動くことがどんな意味を持つかは明白。来季こそ本気で“阿部&村田外し”のチーム作りを画策しているということだ。

 原監督からキーマンとして名前を挙げられた2人だったが、阪神とのCSファイナルステージで阿部は16打数2安打、打率1割2分5厘、1本塁打、2打点とサッパリ。村田は14打数5安打で打率3割7分5厘はまずまずだが、0本塁打、1打点はお寒い限りだ。来季へ大きな不安を残した。

 内野手のグリエルは、今季DeNAで二塁35試合、三塁で29試合に出場した。守備評価は分かれているが、高い身体能力は誰もが認めるところ。「飛行機嫌い」という難点はあるものの、華のあるプレースタイルは、巨人内で高く評価されている。球団関係者は「今までは村田が不振に陥っても、三塁の代役がいなかった。グリエルなら十分、村田の競争相手が務まる」と話す。

 一方のデスパイネは外野手。獲得に成功すれば、ポジションがかぶるアンダーソンをロペス退団で空いた一塁へ回す構想だという。「捕手は小林中心に、一塁は慎之助とアンダーソンの併用という起用も十分考えられるだろう」(同)という。

 今後球団の思惑通りに補強が進展した場合、村田と阿部は来季、グリエル、アンダーソンという強敵と厳しいレギュラー争いを強いられる可能性があるということ。阿部や村田に頼る必要のないチーム作りは、2人の衰えを感じているからにほかならないし、2人を脅かす若手が育たないならば、補強でカバーするのは巨人本来のやり方でもある。巨人が球界の盟主であり続けられるのは、補強に次ぐ補強による、チーム内競争の激しさゆえでもある。CS惨敗で吹き荒れる嵐は、リーグV3の功労者たちものみ込もうとしている。