セ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第3戦(17日、東京ドーム)も巨人は2―4で阪神に破れ、日本シリーズ進出に王手をかけられた。

 あっという間に瀬戸際に追い込まれた。連敗して迎えたこの日は、初回に阿部の適時打で3戦目にして始めて先制に成功。亀井のソロで2点目を挙げると、杉内も5回までは2安打無失点の快投を演じ、ペースは完全に巨人が握っていた…はずだった。


 試合が暗転したのは6回。突如制球を乱した杉内が2安打で1点を失うと、2番手の西村が福留に同点打を許してしまう。さらに7回には頼みの山口がゴメスに勝ち越しの2点適時打を放たれ、勝負は決した。


 まさかの3連敗。崖っ縁に追い込まれた原監督は紅潮した顔で「現実的にこの数字になったわけですから、しっかり受け止めて」と語ると「まだまだ勝負はこれから」と強気に前を向いた。


 次戦以降は敗れれば即終戦という絶望的状況となったが、巨人は2年前のファイナルステージでも同様の逆境をはね返している。2012年は高木監督率いる中日に3連敗を喫しながら、驚異の3連勝で日本シリーズ進出を果たした。チームは当然、奇跡の再現を期待している。だが当時と比較すると、いくつか厳しい現実が浮かび上がった。


 まず1つ目は「切り札がいない」という点だ。12年の巨人には、シーズン代打打率4割5厘という数字を残し、CSでも第5戦にサヨナラ打を放ってMVPに選ばれた石井義がいた。だが今年その役割を担うべきセペダは、この日も8回に一打逆転の場面で凡退。今の雰囲気ではラッキーボーイへの変身は望めそうもない。


 頼れるベテランの不在も響いている。2年前はチームの精神的支柱である高橋由が、ナインの動揺を静める役目を担った。この日、球団首脳は「由伸がいれば流れも違っていると思うんだが…」と嘆いたが、高橋由は現在、右手中指腱の故障でリハビリ中。最近ようやくバットを振れるようになったという段階で、試合出場は厳しい状況だ。


 そして敵軍ベンチの空気も2年前とは異なる。当時の中日は、CS中も高木監督と権藤投手コーチが投手起用をめぐって度々衝突。チーム一丸とは言えず、巨人は団結してその隙を突いた。しかし今回の阪神はというと、続投が決まった和田監督の采配には迷いが見えない。大一番で硬さが目立った選手たちも、開き直ったようにのびのびプレーしている。


 今季は自慢の底力で何度も窮地を乗り越えてきた巨人だが、さすがに今回ばかりは絶体絶命というしかない。2度目の奇跡を起こし、日本一奪回への道を切り開くことはできるのか――。