パ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第3戦(17日、ヤフオクドーム)は日本ハムがソフトバンクに12―4で大勝した。これで2勝2敗のタイ。連勝の日本ハムは今季限りで現役を引退する稲葉篤紀外野手(42)による“メンタルクリニック”効果もあって上げ潮ムードだ。

 下克上を目指す日本ハムの懸案事項が、立て続けに解消された。前日まで今ポストシーズン21打数2安打12三振とサッパリだった陽岱鋼が、初回には先制ソロ、2回の第2打席でもバックスクリーンに3ランを叩き込むなど3安打5打点の大暴れ。同じく13打数1安打6三振と精彩を欠いていた大谷もマルチ安打を記録して勝利に貢献した。加えて絶好調の中田もポストシーズン新記録となる4戦連発の3ランを放ったのだから、12―4の快勝も当然だ。


 ソフトバンク先発・摂津の不調もあったのだろうが、クリーンアップが計7安打8打点と足並みを揃えて爆発したのは決して偶然ではない。3人の活躍を陰から支えているのが、今季限りで引退する稲葉による“メンタルクリニック”だ。


 その診察と治療は、患者の性格や状態を見極めて適切に行う。陽岱鋼に対しては「どんなにあがいてもダメな時はダメ。だからなるべく普通に接した。うまく切り替えられるのが一流選手」(稲葉)と勝ち気な性格を考慮し、あえて静観して復調の時を待った。


 逆に頭が混乱している大谷には、ソフトな対話路線でその中身を整理。試合中、隣に座らせて相手捕手・細川の配球の傾向をアドバイスした。さっそく2安打と結果が出た大谷は「稲葉さんには『どうやって打席に立っている?』と配球の傾向を聞かれました。今まで外とか内とか考えすぎていた」と“稲葉メンタルクリニック”に感謝しきりだ。


 4戦連発でチームをけん引している中田も、ほったらかしにはしない。“稲葉医師”は過去のカルテを参考に「翔は気分屋だから打てば乗っていく。だけど最後の9回の打席(左飛)は怒った。バットを持ったまま走らなかった。そういうところから(スランプに)ハマっていく」と乗りに乗っている主砲を一喝。あえて厳しい言葉をかけることで慢心の芽を摘み取った。


 ポストシーズンでは代打のみの出場となっているが、自身5度目となる日本一への思いは誰よりも強い。「あの辺が打たないとチームが乗ってこない」とキーマンたちに目を光らせる稲葉は、優勝請負人としての役目を最後まで貫くつもりだ。