15日にヤフオクドームで行われたパ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ(6回戦制)第1戦は、リーグ覇者のソフトバンクが3位の日本ハムに3―2で逆転サヨナラ勝ち。1勝のアドバンテージを含めて2勝差をつけた。前日14日に秋山幸二監督(52)が今季限りでの辞任を表明。後任としてOBの工藤公康氏(51)が最有力視される中で戦う鷹軍団だが、ナインは動揺するどころか、“監督問題”をパワーの源にしている。

 1点を追う9回一死二、三塁で吉村が放った打球は日本ハムの中堅手・陽岱鋼の頭上を越え、劇的な逆転サヨナラ勝ち。鷹ナインは大歓喜。秋山監督も「最後の最後まで何があるか分からんな。こういう勝ち方をすれば、明日、勢いがつくかもしれんな」と満足そうに話した。

 秋山監督の今季限りでの退任が発表された翌日の戦い。後任について、王球団会長は「慎重に考えないといけない。来季以降、指揮を執ってもらう人を決めるんだから、我々にも時間を与えてくれないとね」と話したが、現段階ではOBの工藤氏が最有力視されている。当然、そんな話はナインの耳にも届く。CS真っただ中での驚きの事態だ。

 だが、ナインはこう話す。「監督は雑音をシャットアウトするように、という話をしていた。今回のことでバタバタしてしまうのではなく、普段通りに自分のできることをやることだと思う」(ある選手)。このCSで負けたら、やはり“監督問題”があったから、と言われかねない。それは避けなければならないし、そうなったら秋山監督に申し訳ない。監督問題で逆にナインは奮い立っているのだ。

 ソフトバンクは、伝統的に「勝ちたい」との思いが強いと重圧になって空回りすることが多かった。同じようなケースでいえば、王会長が監督を勇退した2008年も、発表以降に失速が一向に止まらず、最下位にまで転落した。CSなど短期決戦の弱さもその一つだが、今回は違う。「秋山監督が常に言ってきたのは、重圧だったり、周りのいろんな状況に左右されずに、とにかく自分のことに集中しろということ。それがみんなの意識の中にあるんだよ」(チーム関係者)。今回の件でガチガチに力んだり、動揺してしまっては、6年間、指揮官が言い続けてきたことに反する。ナインはそれを肝に銘じて打倒日本ハムに集中しているわけだ。

“秋山ショック”を克服して勝つ! 鷹ナインにとって、ポストシーズンの戦いは“秋山イズム”の総決算だ。