日本ハム・大谷翔平投手(20)が公式戦今季最終登板となった5日の楽天戦(札幌ドーム)で日本球界最速タイの162キロを4球マーク。先発が予想される11日のCSファーストステージ初戦に向け、2回2安打無失点3奪三振で最終調整を終えた。初の短期決戦ではエース級の働きが求められる。そんななか、首脳陣からは大谷が真のエースに成長するためには「一球の怖さ」を経験する痛みも必要だとの声が上がっている。

 風邪による発熱の影響で中13日の登板となった今季最終戦で、大谷は4球の162キロを含む12球の160キロ超えを披露。「今日は2~3イニングと決まっていたので0点に抑えられてよかったです。間隔も空いていたので真っすぐ主体でどれだけ押していけるかを課題にしていました。ただ、もう少し精度を上げていかなければいけない部分もあったので次の登板までには修正したい」と課題を口にしながらも、CSに向けた最終調整としては上々の内容だった。

 二刀流2年目の今季、投手で24試合155回1/3を投げ、11勝4敗、防御率2・61、179奪三振の成績を残した大谷は、未知の領域であるポストシーズンでエース級の働きが求められる。そんな若き右腕に黒木投手コーチは「何事も経験なのでまずは持っている力を出してくれたらいい」と言いつつも、真のエースに成長するためには決定的な敗北感を経験する必要もあると力説した。

「チームとしてあってはいけないことですが、翔平が『一球の怖さ』を知るためにはチームの命運を託された試合で全てを無にしてしまうような経験は避けて通れない。最近でいえばホークスの優勝が決まった試合で打たれた比嘉と捕手の伊藤が泣き崩れていた場面。あれで比嘉はもっと制球を磨いておくべきだったと思っただろうし、伊藤はもっと別の配球があったのではと後悔したはず」

 黒木コーチ自身、ロッテでの現役時代の1998年7月7日のオリックス戦で9回二死から同点2ランを浴び、プロ野球ワースト記録の17連敗を味わった。その経験があったからこそ、エースにまで上り詰めることができた面もある。それだけに「そういう経験からしか学べないものがある」との思いも強い。

 オリックスと戦うCSファーストステージ初戦では、敵地・京セラでパ・リーグ投手2冠(16勝、防御率1・98)が確実の金子との投げ合いが予想される。黒木コーチの言葉には“結果を気にせずに思い切って投げろ”とのメッセージも込められている。勝っても負けても大谷の糧となるはずだ。