【朝井秀樹のおじゃまします】
――今年の巨人の強さに迫ってみたいのですが、とにかく接戦に強かった印象が強いですね
阿部:チームでいかに効率よく点を取るか、だよ。ここっていうときに、ドドドッて攻める。打てなきゃしっかり守る。例えば、ヤクルトはチーム打率が一番よくて総得点も多いよね。でも、なんでそれより打てない巨人が、今年優勝できたのかってことなんだよ。
――そこが巨人の強さ
阿部:正直そこだけだと思うよ。MVPも選べないぐらいなんだから。
――去年の日本シリーズでは「俺が打てなければ負ける」というようなことを話していましたよね。でも今年は阿部さんが打てなくても、チームは勝っていますね
阿部:去年は自分が少し子供だったよね。「自分が打たなきゃ負ける」とか、そんな格好つけたことをなんで言っていたんだろうって思う。チームが勝てばいい話なのにな。そんなことを言っていたから、日本シリーズで勝てなかったんだ。個人がどんな成績でも、最後にチームが相手より1点多く取って勝てばいいんだ。そういうほうががむしゃらさも出る。
――僕が今年、一番印象に残っているのが、交流戦の敵地オリックス戦。相手先発の金子千尋が9回までノーヒットノーラン。それでも最後は巨人が勝ちました
阿部:それが野球なんだよ。ウチは何回も優勝しているメンバーがいるから、言ってしまえば「勝ち方を知っている」んだ。中日時代に短期決戦を何度も戦っている井端さんもいたしね。
ロペスは歴代最高のナイスガイ助っ人
――井端さんが加わった意味はやっぱり大きかったですか
阿部:すごく大きかった。心強さがあったな。敵から見たらうっとうしいよ、ああいう打者は。相手から見たらいやらしい選手。若い選手にもすごく勉強になる。うちはこれまで「ドーン、ドーンと行こうぜ」っていうノリだったから。そうじゃない野球もあるってことを教えてくれているよね。
――負けたら首位陥落という瞬間も何度もありました。前半戦は広島に勢いがありましたし、さすがに「ヤバいかも」と感じたことはありませんでしたか
阿部:正直それは、思ったな。カープは去年の勢いそのままシーズンに入ってきたからね。菊池と丸は元気だし、エルドレッドはえげつないしさ。
――そういえば、エルドレッドは9月最初の3連戦(巨人が3連勝)には不在でしたね
阿部:敵からしたら、やっぱりエルドレッドは怖いよ。たとえ5三振しても、翌日は怖い。あの3連戦にいなかったのは幸いだったね。それがカープを突き放せた一因でもあったんじゃないかな。
――外国人といえば、阿部さんはチーム内ではロペスとよく会話を交わしていますね
阿部:ホセ(ロペス)は偉いよ。俺が一塁に入っても、全然ふてくされない。今まで見てきた外国人選手のなかで、一番ナイスガイだと思う。「アベさんが一塁にいるんだったら、ヨシノブさんいないし、レフトの練習するよ」って言って外野の練習したりね。ああいう姿がチームを強くするんだなって思った。彼にもメジャーリーガーのプライドがあるだろうけど、ああやってみんなと打ち解けようとしているのは素晴らしいよ。
――競争の激しさは巨人の特徴ですね
阿部:今年で言えば、ヤス(片岡)がダメなら、井端さんが出る。ヤスだって嫌だと思うよ。でも代わられるっていう気持ちがあるから必死になるし。井端さんもベンチスタートでも常に試合に入る準備をしている。そういう競争がチームを強くするんだよね。ウチの空気は、朝井もよく知っているだろ?
巨人がなぜ強いのか終盤に気づいた
――はい、痛いほど感じていました
阿部:実はなんで巨人が強いのか、終盤になって気付いたんだ。下位打線で打つ選手がヒーローになったり、ピシャッと抑えた中継ぎだったり、日替わりでヒーローが出る。それが強みなんだ。本当は主力が打ってヒーローになるのが理想かもしれない。だけどそれだけじゃ“興行”だからね。
――では巨人が今後も勝ち続けていくためには何が必要でしょうか
阿部:それは“ニューヒーロー”だね。ファームからどれだけ選手が出てくるか。それで一軍にいる選手も焦るし、チームは強くなると思う。球団が外から誰を連れてくるかはわからないけど、本当は今ファームにいる選手の中から「誰だお前?」みたいなヤツが出てこないといけないよね。
――キャプテン、今日はありがとうございました! 今後も巨人の現場に“おじゃま”させていただきますので、よろしくお願いします
阿部:おう、お互い元気で頑張ろうな!