二刀流で文句のつけようのない結果を残しつつある日本ハム・大谷翔平投手(20)の成功を、当事者たちはどう思っているのか。2年前のドラフトで大谷獲得に尽力した大渕隆スカウトディレクター(44)が胸中を明かした。

 大谷は7日のオリックス戦(京セラドーム)で10号本塁打を放ち、日本球界初となる「2桁勝利、2桁本塁打」の快挙を成し遂げた。あのベーブ・ルースが1918年にマークした伝説の“二刀流記録”13勝、11本塁打にも迫り、怪物の勢いは止まらない。大渕スカウトディレクターは「投手の方がこんなに早く良くなるとは思わなかった。トップの位置が安定して制球がだいぶ良くなった」と大谷の進化に目を丸くしている。

 2年目の今季は「投手として成長することが二刀流を前進させる」(栗山監督)と投手としての育成により重点を置いたが、二刀流の環境作りは実に面倒が多い。そもそもが練習メニューからコンディショニング、体のケアまで違う完全な別職種である投手と野手。その分業概念を一人の選手のために融合し、オーダーメードのメニューやコンディショニングの方法、ケア、起用法を作るには監督やトレーナーをはじめ組織全体の理解、協力が必要となる。

 大渕ディレクターは「何事も合理的に考える米国人は絶対にやらないでしょうね、こんな面倒なこと。メジャーは圧倒的に分厚いマイナーリーグの選手層があるからただ選別していけばいい。でもその層が薄い日本では米国が選別するものをすくい上げて上に持っていかないといけない」と告白。そんな苦労も大谷の活躍で報われた格好だ。

 ルースの記録に近づき、いまや二刀流への風向きは完全に逆転している。「あの時(2年前)に『二刀流なんてできっこない』と言っていた人たちのコメントをずらっと並べといてくださいよ」と笑う大渕ディレクターの言葉に実感がこもっていた。