ついに“伝説”の域に到達した。投打二刀流の日本ハム・大谷翔平投手(20)のことだ。野手として「5番・DH」で出場した7日のオリックス戦(京セラ)4回、吉田一が投じた真ん中高めの甘い球をジャストミートし、10号ソロを中堅スタンドへ叩き込んだ。もちろん日本では初めて、米球界を引き合いに出しても1918年のベーブ・ルース(当時レッドソックス)以来となる10勝、10本塁打をマーク。その成長速度の速さには周囲も驚くばかりだ。

「打った瞬間は弾道が低かったので、入るかどうか分からなかった」という大谷は、ライナー性の当たりに一塁を回るまでは全力疾走だった。さらに2桁勝利&本塁打にも「個人的にあまり気にしていない」。そっけなかったのは4―8でチームが負けたせいもあるのだろうが、さりげなく偉業を成し遂げた大谷には周囲も目を白黒させるばかりだ。

 今季は先発投手での貢献をまず求められた。打者での出場は体に負担が掛からないよう限られている中、7月下旬に栗山監督が「打つ方は技術が上がった。ヒザが折れる癖が急に直った。誰も教えていないと思う」と語ったように成長を示した。

 すでに10勝を挙げている“本業”もしかり。山田GMは「大谷の今年の成長はこちらの想定を超えている。ダルビッシュの2年目以上」とした上で「球が速いのは分かっていたけど、ストレートの球速が常に150キロ以上というのは考えられなかった」と明かす。

 持って生まれた身体能力の高さは高校時代から証明済みだが、松坂やダルビッシュ、田中、藤浪といった甲子園のスターたちとは違い、大谷は2年時には骨端線損傷で投手としての“休養”も経験している。それでもダルビッシュの入団2年目の12勝に迫る10勝をマークできたのは「ダルと同じで四六時中、野球のことを考えていても苦にならない性格。だからどんな壁にぶつかっても、自分で考えて解決していける」(山田GM)からだという。

 日本初の偉業にも「他の打席で打てる球はあったし、まだやらないといけない。もっと気を引き締めて」と大谷。この調子なら、ダル超えどころか1918年にベーブ・ルースが記録した13勝、11本塁打を超えるのも時間の問題だ。