巨人は“難敵”を撲滅できるか――。5日のヤクルト戦は、先発の内海哲也(32)が6回途中10安打4失点の背信KO。打線も相手先発の七條に完投を許し、1―4で敗れて優勝マジックは一夜で消滅した。広島に3連勝した勢いで突っ走りたいところだったが、神宮に乗り込むとツバメのほかにも強敵の姿が…。首都を混乱に陥れている“あの脅威”がGナインの近くにも迫っている。

 試合前から、巨人ナインは“小さな強敵”を相手に悪戦苦闘だった。この日、神宮球場では大学野球が行われていたため、巨人は投手も野手も球場から程近い室内練習場とコブシ球場で練習を行った。だがそこで待ち構えていたのは、首都を恐怖に陥れているデング熱騒動の主役である蚊の大群だった。


 この日は新たに新宿で蚊に刺された男性の感染例が報告されるなど、デング熱発症者は全国で60人を超えた。神宮球場は主な“発生源”とされる代々木公園(閉鎖中)に程近い。しかも茂みに囲まれた練習場周辺は、蚊の巣窟。本紙が昨報したようにヤクルトも徹底警戒している。主将の阿部は「結構(範囲が)広がっているんですね。気をつけないと」と話し、長野も「人から人への感染はないと聞きますが、感染した人を刺した蚊がいるかもしれませんしね」とピリピリムードだった。


 球団は前日まで事態の推移を見守る方針だったが、感染範囲の拡大を受けて急きょトレーナー陣に対策を指示。三塁側ロッカーには大量の虫よけスプレーが用意され、ベンチ周辺には多めに蚊取り線香がたかれた。


 それでも脅威が全て消えたわけではない。球団関係者は「これぐらいしかできないが、何もしないよりはマシ。ホームのヤクルトさんは大変だろうけど、ウチも大事な時期。ただでさえけが人が多いのに、これ以上休む選手が出たら大変だからね」と不安顔だった。


“デングショック”に悩まされながら始まった試合は、前回完封の内海がヤクルト相手に苦しい投球を強いられた。毎回安打を許して5回までに2点を失うと、6回一死三塁で中村に2ランを被弾。6回途中10安打4失点でKOとなった。広島に3連勝して盛り上がったムードをぶち壊し、今季8敗目(4勝)を喫した。


 打線は大振りが目立ち、七條に橋本の犠飛で挙げた1点だけに封じられた。村田打撃コーチは「強引さを消してコンパクトなスイングを」と指示したが、手元で細かく変化する球を最後まで捉え切れなかった。


 試合後の原監督は「(七條には)少し詰まらされたというか、かわされたというか…。完投されたわけだから何とかしないと。今日は内海哲也の“う”の字も出なかった。しかし(打線も)もうちょっと打たないとイカン」とおかんむり。最下位相手に星を落とし、優勝マジックは一夜で消灯してしまった。


 デング熱を運ぶ蚊の脅威にさらされているのはヤクルトも同様。だが、最下位のヤクルトとは違い、巨人は優勝争いの真っ最中でチームの士気は高まっているところ。そんなところへ水を差されて、失速のきっかけにでもなったらたまらない。巨人としては気を取り直してここも勝ち越し、勢いよく週明けの甲子園決戦に乗り込みたいところだが…。