阪神が29日のヤクルト戦(甲子園)で10―5と逃げ切った。掛布雅之育成&打撃コーディネーター(DC=59)イチ押しの狩野恵輔外野手(31)が一軍昇格即スタメンで3安打1本塁打4打点と大暴れ。「勝負の9月」を前に強力な新戦力が加わったことで球団内では逆転Vに向けて一気に加速すると大いに盛り上がっている。

 今季初打席となった2回の1打席目に追加点につながる右前打を放つと、続く2打席目には二死二塁から左翼席に今季初アーチ。さらに、3打席目も二死二、三塁から2点タイムリーとなる左前打で打線爆発の原動力となった。

 2009年には捕手として122試合に出場するなど正妻の座をつかみかけたものの、腰痛など度重なる故障に見舞われた。13年には育成選手となるなど試練を乗り越えてきた苦労人。それだけに狩野は「いろいろあったけど、神様はいるんだな、と感じた」と感慨深げに話した。

 実は掛布DCは狩野の打撃を2月の春季キャンプから高く評価していた。「十分に一軍で通用する力はある。故障で苦労してきた選手だけに、こういう選手が一軍に這い上がって結果を出せばチームに活気を与える。彼がどれだけ苦労してきたか。どれだけ努力してきたか。みんな、そういう姿を見ているからね。当然、チームの戦力アップにもつながる」。チームに勢いを与えることができる選手と考えていたのだ。

 チーム関係者も「このタイミングで狩野が昇格して、すぐに結果を残してくれたのは大きい。なかなか巨人を追い抜くことができなくて直接対決でも2カード連続負け越し。去年の大失速ほどじゃないけど、嫌な流れになりかけているところで出てきてくれた。ムードも流れもかわるかもしれない」とラストスパートの起爆剤となる存在として期待を膨らませている。

 さらに、この日は相手が左腕先発の時にスタメン出場していた新井良の代役として一軍に昇格し、その穴を埋める活躍だ。球団関係者は「心身ともに疲れがたまっているシーズン終盤の故障離脱はチームの士気にも影響する。でも、代わりの選手がきっちりと仕事をしてくれることで選手も安心するし、まだまだ戦えるという自信にもなる」と“狩野効果”を指摘する。

 残り28試合。逆転Vに向けて心強い戦力が加わった。