巨人・内海哲也投手(32)が29日のDeNA戦(横浜)に先発し、5安打10奪三振で無四球完封。かねて熱望した尚成との投げ合いを今季初のシャットアウトで制し、4勝目(7敗)をマークした。左腕エースが“師匠”を相手に開幕からの不振を払拭する快投。そんな“師弟対決”の裏では、何があったのか…。

 試合終了の瞬間、内海は左こぶしを力強く握った。「今日は師匠の尚成さんとの対決だったので、何が何でも勝とうと思っていました」。09年まで巨人で一緒にプレーした先輩左腕との師弟対決はいつになく気合が入るマウンドだった。

 立ち上がりから球数をかけながらも、丁寧に低めを突く投球でDeNAの強力打線を翻弄。4回に阿部、村田の連続本塁打、6回にロペスの一発で援護をもらうと、圧巻の奪三振ショーでスコアボードにゼロを並べた。

 開幕からの不振がウソのような姿には原監督もご満悦で「安心という言葉はなかなか試合では使えないけれど、真っすぐが非常によかった。変化球に頼る投球じゃないところに強さを感じました」と気持ちの入った投球を称賛した。

 内海が尚成を“師匠”と慕うようになったのは2年目のオフ。グアムでの自主トレに誘われたのがきっかけだ。現在は先輩左腕の後を継いで内海がリーダーとなって毎年行っている。尚成の5年ぶりの日本球界復帰を誰よりも喜んだのも内海。昨オフから師弟対決の実現を熱望していた。だからこそ、白星には喜びもひとしおで「いつも以上に気合が入りました。投げていて楽しかった。成長した姿を見せたかったのでよかったです」(内海)

 内海にとって大きな意味を持つマウンドだったのは言うまでもないが、それは巨人にとっても同じだった。

 実は数年前、巨人では先発投手陣補強のため、尚成の巨人復帰待望論が強まったことがある。ところが、その一方でこんな反対意見もあった。

「投手陣はもうテツ(内海)のチーム。かつてのリーダーを戻して、バランスを崩すのもどうなのか」

 尚成が去った後のG投手陣を内海が中心となってまとめた。派閥を作らず、若手にも配慮する抜群のリーダーシップを発揮。新リーダーの働きでチームはより一丸となった。そのため“元リーダー”の復帰に反対する声が出たわけだ。結局、尚成の巨人復帰はなく、そんな経緯があっただけに、ナインやスタッフらは特別な感情でこの日の両者の投げ合いを見守っていた。

 G投をけん引するリーダーとして“師匠”に大きくなった姿を見せることができた内海。今回の師弟対決を機に、左腕エースがようやく本領発揮か。