セ・リーグの首位攻防戦第2ラウンドが27日、東京ドームで行われ、2位阪神が首位巨人に延長10回の激戦の末、5―4で逆転勝ちし、負ければ自力V消滅の危機をしのいで再び1・5ゲーム差に詰め寄った。勝利の裏には特大弾で勝負を決めた不動の4番、マウロ・ゴメス内野手(29)の「がっくりトレーニング」があった。

「打った瞬間、入ると思った」。同点の延長10回一死一塁、フルスイングしたゴメスは打球の行方を確認してから、ゆっくりと走り始めるほど手応え十分だった。左翼席上の看板フレームに直撃する特大の21号2ラン。自力V消滅危機に直面したチームを救う主砲の一発に、和田監督も「ゴメスが“ザ・4番”という、いい仕事をしてくれた」と大絶賛だ。

「チームの勝利に貢献できてうれしい。リラックスして、自分が打てる球をしっかり打ちにいこうと思って試合に臨んだ」と振り返ったゴメスは、試合前に前代未聞のトレーニングを行っていた。打撃練習中のことだ。ゴメスは打撃ケージの横で素振りをすると、まるで左翼席に飛んでいく打球を目で追いかけるような動きをする。自らが本塁打を打っていることを想像するイメージトレーニングかと思われたが、そうではなかった。

 白球が左翼席に飛び込むことを想定して喜ぶところで、ゴメスは逆にガックリとうなだれる。素振りをしては打球を目で追うしぐさを何度も繰り返し、そのたびに太ももを悔しそうに叩いたり、目を閉じてこぶしを握り締めたり…。「会心の当たりが、フェンス手前で失速して左飛」。そんなイメージを頭に浮かべるような動きを見せた。

 イメトレは自分の活躍しているシーンを想像することで気持ちを高めたり、自信を深めて本番に臨むものだが、ゴメスは正反対の“ネガティブ・イメトレ”に取り組んでいたのだ。球団関係者は「ゴメスは26日の初戦でも本塁打を打っている。狭い東京ドームだし、欲が出るところだ。しかし本塁打を狙いすぎるとスイングは粗くなって裏目になってしまう。そこで“大振りにならないように、コンパクトに”という自戒のために、あえて悪いイメージをしたんだろう」と狙いを分析。この練習を見事に首位攻防戦での2試合連続アーチという成果に結びつけた。

 研究熱心で練習に取り組む姿勢も評価されている“ザ・4番”。チームに貢献するために斬新な練習にも挑戦する超優良助っ人だ。