日本ハム・大谷翔平投手(20)の2桁勝利はまたも持ち越しとなった。17日の西武戦(西武ドーム)に先発し、7回4安打3失点でしのいだが、勝ち負けつかず。気になるのは自己最多の149球を投げ、自己ワーストの8四球と制球難に苦しんだこと。この裏にはやはり、あの問題が…。

 大谷は険しい表情だった。初回に中村に3ランを浴びながら、その後は7回まで無失点でしのいだが、三者凡退は一度もなく、毎回走者を背負った149球に「全体的に全然ダメでした。(2回以降の零封は)相手が甘い球を打ち損じてくれただけ。抑えた感じではない。今日のようなピッチングをしていたら(味方打線が)点も取れないし、僕が野手でも守りたくない投手ですね」と自らダメ出しだ。

 最速159キロの速球は上下に暴れ、変化球はすっぽ抜けた。初回、フォークの大暴投は漫画のようにバックネットに突き刺さった。厚沢投手コーチは大谷の8四球を含めこの3連戦で日本ハム投手陣が与えた計27四球について「西武ドームのマウンドの傾斜が変わっていて対応できなかった」ことを理由に挙げたが、大谷が戦っていた相手はそれだけではなかった。

 この試合まで4試合に登板し、3勝0敗、防御率0・68、37奪三振(26回2/3)と圧倒していた西武相手に初めて大谷が見せた“独り相撲”。二刀流をこなしながら、投手として18試合、118回を投げた疲れももちろんあっただろう。その上、10日のソフトバンク戦で「口元の動きで球種が分かる」というクセが本紙報道(12日付)で発覚し、この1週間“顔面矯正”に追われた。これも、この日の大荒れ投球とやはり無縁ではなかったようだ。

 この試合での大谷はすべての球種で口を真一文字に結び、努めて表情を変えなかった。これまでのストレートを投げる時の“クセ顔”だが、今回はこれに統一した形だ。ただ、意図的に喜怒哀楽を殺さざるを得ないためか、大谷は初回から自分のリズムを出せなかった。

 西武打線は大谷のクセを事前に知った上で「自分は見ません。相手のクセに気を取られると自分のタイミングで打つことに集中できなくなるから」と主将・栗山が語っていたように、多くの打者が相手の情報より自分のタイミングを優先させることに集中していたという。大谷は8四球を与えた7回149球のほとんどが相手打者ではなく、自分自身との闘いだったわけだが…。

 プロ野球選手はスコアラー、相手ベンチ、観客、メディアらの目にさらされた中で結果を求められる商売。9勝をマークした前半戦から一転、後半戦はまだ勝ち星がない大谷は、この“顔面クセ問題”の壁を乗り越えない限り進化はない。