阪神のドラフト1位左腕・岩貞祐太(22)が17日のDeNA戦(横浜)でプロ初勝利を飾った。プロ2戦目ながらも落ち着いたマウンドさばきで6回途中2失点。早速、首脳陣は伸び悩む若虎投手陣に対して「度胸満点ルーキーを見習え!」という指令を飛ばしているが、ポイントは「二重人格」だ。

 初回からテンポよく直球と変化球を投げ分け、DeNA打線を4安打6奪三振と翻弄。6回二死から連続本塁打を浴びて降板したが、堂々の投球内容だった。即戦力と期待されながらも春季キャンプ中に左ヒジを痛め、デビューが大幅に遅れた。それだけに岩貞は「いきなりケガをして思い通りにいかない時期があって…。ようやく1勝を手にしてうれしい」と感慨深げに話した。


 和田監督が「この時期に出てきたのは非常に大きい」と喜ぶように先発投手の駒不足に悩むチームにとっても大きな意味を持つ白星だが、コーチ陣はさらなる“岩貞効果”を期待している。


 投手陣が駒不足に陥っている最大の原因は若手の伸び悩み。「ブルペンではすごい球を投げるのにマウンドに行くとダメ。精神的な問題が大きい」とチーム関係者も頭を抱えるばかりだ。


 そんな中、首脳陣は岩貞の投球スタイルに注目している。和田監督が「投げっぷりがいい」とほめれば中西投手コーチも「打者にしっかりと向かっていける」と評価。


 別のコーチも「今のところ良いのはメンタルの強さだけ。制球も速球も体力もまだまだ発展途上。ただメンタルが強いから腕も振れるし、ピンチで動じない。逆球を投げてしまっても表情を変えないから相手も戸惑う」とルーキーの精神力を絶賛する。


 この強さの秘訣はオンとオフをきっちり切り替える「二重人格」ぶりだ。コーチ陣は「登板前はだいぶ緊張していた。表情が硬かったし、笑顔もひきつっていた。ところが、グラウンドに出た瞬間、勝負の顔になっていた。好投手にはそういう人が多い。岩貞もそういうタイプなんだろう」「普段はマイペースで明るいが、試合に入ると一気に雰囲気が変わる。このメリハリが試合での強いメンタルにつながっている」と指摘。そこで「この切り替えを若い投手にも見習わせたい」と岩貞をメンタル面強化の教材にしようと考えているのだ。


 駒不足解消と若虎強化。遅れてきたルーキーがV戦線の流れを一変させるかもしれない。