【ズームアップ甲子園(15日)】第96回全国高等学校野球選手権大会第5日の15日、第1試合では最速146キロの好投手・岸潤一郎投手(3年)の明徳義塾(高知)と高校通算73発のスラッガー・岡本和真内野手(3年)を擁する智弁学園(奈良)が激突。16安打を放った明徳義塾が10―4で勝利したが、ともに試合前から互いを意識した猛烈なせめぎ合いがあった――。

 試合は2回に4長短打で3点を奪った明徳義塾がその後も効果的に得点を重ねて勝利。岸vs岡本は4打数2安打2三振の“引き分け”という結果に終わった。ともにプロ注目選手を擁する甲子園常連の強豪校。世間の注目を集めた一戦は、戦前から互いを存分に意識して火花を散らしていた。

 まずは明徳義塾・馬淵監督の「岡本のホームランは参考にならん。奈良は球場が狭い」発言。智弁学園を挑発しているかのようにも聞こえたが、これはきっちり分析を行ったうえでの発言だった。

「馬淵監督と智弁の奈良県大会の映像をいくつか見ていると本来、本塁打ではない軌道のボールがスタンドに入っていました。奈良は県大会でホームランが計30本も出ていたし、ウチの奈良出身のメンバーとも情報をすり寄せると、球場は狭い、外野のフェンスは低い、上空の風向きも本塁打になりやすいということが分かっていた」(明徳ナイン)。高知のグラウンドと照らし合わせ、智弁打線の傾向を分析。その結果、岸も「実際、岡本よりも(1番で俊足の)大西の方が最初から嫌だと思っていました」と話している。

 明徳サイドは馬淵監督が親交の深い智弁和歌山(和歌山)の高嶋仁監督を通じて、系列校の智弁学園情報を入手しようともしていたが「結局、智弁と智弁和歌山はそれほど交流がないそうで情報は得られなかった」。それでもナインは「監督が細かく分析したうえで話す内容にはいつも勇気づけられています」と話し、馬淵監督の分析能力が勝利につながった。

 一方の智弁学園はチームから“雑音”を遮断するなど神経質になっていた。選手によれば「小坂監督からは相手の監督の発言などの情報は耳にするなと言われ、新聞やニュースなども見ないようにしていました」。また、一部の選手らは試合前「相手の分析はそこまでしていない」と報道陣に話していたが、実際は控え選手を中心に綿密な分析を行い、資料にまとめていた。気にするそぶりを見せない行為自体が相手を極度に意識していることの表れでもある。海千山千の名将を前に意識過剰になるのも無理はなく、この点でも明徳に一日の長があったようだ。