阪神が14日の巨人戦(東京ドーム)で1―4と完敗。首位浮上のチャンスもあった直接対決に1勝2敗と負け越し、2・5ゲーム差に後退した。しかし、2週間後の26日からの再決戦に向けて大きな収穫をつかんだ。それは巨人の周到な包囲網を突破し、7回2失点と好投した藤浪晋太郎投手(20)だ。

 和田監督は「また再来週、この東京ドームでのゲームがある。明日以降、しっかりと戦ってゲーム差を詰めた状態で巨人と対戦したい」と前を向いた。今回は負け越したものの首位・巨人との直接対決は残り2カード。まだまだ巻き返すチャンスは十分にある。今季巨人戦初登板となった藤浪の好投が次回の首位攻防戦でも有力な反撃材料になるという手応えもつかんだ。

 根拠となっているのは阪神サイドが入手した「巨人が阿部を中心に藤浪を相当、研究している」(球団関係者)という情報。それは7月19日に甲子園球場で行われた球宴第2戦でのことだ。球団関係者が打ち明ける。

「藤浪がブルペンに入ったら阿部が慌てた様子で『ブルペンはどこ?』と関係者に聞いて練習でも藤浪の球を受けていた。試合でもバッテリーを組んだけど、練習からほとんど阿部が受けていたんだ。今季は対戦がなかった藤浪の状態を確認するためだろう。その感覚をチームに持ち帰って研究に生かしているはず」

 阿部が勝負どころとなる後半戦に向けて藤浪の情報収集に奔走していたというのだ。主将自らミットで集めた藤浪情報がGナインに伝えられたことは確実で、藤浪はこれをはね返す好投を披露した。それだけにコーチ陣は「あの時と今では藤浪は制球、球威ともにはるかに成長している。比べものにならない」とニヤリ。チーム関係者も「藤浪は投げるごとに成長しているといっても過言じゃない。予想を超える投球で巨人は驚いたんじゃないか」と不敵な笑みを浮かべた。

 しかも藤浪は、阿部に対しても6回に空振り三振を奪うなど3打数無安打と“完封”。7試合連続安打と徐々に調子を上げていた主砲の存在は気になるところだったが、その勢いもストップさせた。球団関係者は「これで阿部にもショックを与えられたはず。阿部を乗せてしまうと巨人は止まらなくなるから、ひとまず藤浪が阿部を止めたのは大きい」と指摘する。

 藤浪は「勝たないと意味がない」と硬い表情で球場を後にしたが、次の決戦に向けてしっかりと布石を打ったようだ。