鹿屋中央ナインが誓う“隣家への恩返し”

2014年08月14日 16時00分

市和歌山に勝利し、アルプスに走る鹿屋中央ナイン

【ズームアップ甲子園(13日)】第96回全国高校野球選手権大会は13日、大会3日目を迎え、第2試合で初出場の鹿屋中央(鹿児島)が延長12回、2―1で市和歌山(和歌山)を破った。大隅半島のチームで初めて夏の大舞台に立った鹿屋中央ナインには、ある人への“恩返し”を誓って白星をつかんだ。

 

 延長12回一死一、三塁。米沢(3年)の打球は平凡な二ゴロ(記録は内野安打)だったが、市和歌山二塁手・山根(3年)が一塁に送球する間に三走が生還してサヨナラ勝ち。米沢は「全力で走って、後ろを向いたら試合が終わっていてびっくりした」と、お立ち台でもまだ信じられない表情だった。うれしい甲子園初勝利。鹿屋中央ナインの胸にあったのが“恩返し”の思いだ。

 

 これには同校の練習グラウンドで頻繁に起こっていた出来事が関係している。打撃練習の際、ファウルになった打球が決まって三塁横にある住宅に飛び込み、窓ガラスや屋根瓦を割ってしまっていたことだ。「左打者は打ち損じて、右打者も引っ張りすぎて、なぜかいつもその家に向かって飛んでいってしまったんです」(ある選手)。打球が窓ガラスや瓦を割るたびにコーチが謝罪。ひどい時は1日に2枚のガラスを割ったこともあり、これまでに支払った修理費用は計100万円にもなるという。

 

 これにナインは「あの家の人に申し訳ないし、コーチに何度も謝罪に行ってもらうのも申し訳ない。(その家にぶつけるたびに)コーチから怒られるのも嫌」と奮い立った。今春以降は“打球直撃”を防ぐために皆、打撃練習では低いライナー打球への意識を強く持つようになった。

 

 その結果、ガラスや瓦を割ることもなくなり、それとともに打球スピードが速くなり、ミート力もアップした。打ち損じも少なくなり、初の甲子園切符をつかむまでに成長。当初は「いい加減にしてくれ!」と激怒していた家主も今では「頑張ってね」と応援してくれており、ナインは「あれだけ迷惑を掛けてきた。あの家の人に甲子園優勝を報告に行けたら…」と誓っているのだ。

 

 鹿児島県勢の春夏通算90勝目もマークした鹿屋中央ナイン。その“恩返し”はまだ始まったばかりだ。