阪神が12日の首位攻防第1ラウンドに4―3で先勝し、首位巨人と0・5ゲーム差に肉薄した。立役者は投打で大ハッスルの先発ランディ・メッセンジャー(33)だ。先制を許す苦しいマウンドも、粘りに粘って4年連続2桁勝利となる10勝目をマーク。その心の支えは“弟分”の藤浪晋太郎投手(20)だった。また球団は逆転Vに向けて、1985年の日航機墜落事故で犠牲になった中埜肇球団社長の「遺言」をナインに伝承する。

「グレート!最高の気分だよ」。投打走で大暴れした助っ人右腕はヒーローインタビューで満面の笑みを浮かべた。投げては6回2失点。バットでも5回に右中間二塁打で出塁して勝ち越しのホームを踏むと、6回にも一死満塁から中前2点適時打を叩き出した。今季、巨人に対しては4勝無敗。阪神の外国人投手の4年連続2桁勝利は、1964年から68年まで5年連続のバッキー以来の快挙だ。

 快投の裏にあったのが14日に先発予定の藤浪の存在だ。球団関係者は、こう打ち明ける。「メッセンジャーは藤浪にトレーニング方法を教えたりして先輩、後輩の関係を築いている。この後の巨人戦で藤浪が登板する可能性もある。ここで自分がふがいない投球はできないという心理が作用したはずだ。この試合でキレたら、藤浪の参考にならない。そういう先輩心が働いたのは間違いない」

 巨人打線の状態を藤浪に把握させるためにも、絶対に自滅するわけにはいかなかった。この日は初回に2四球と阿部の適時打で、あっさりと失点。和田監督が「コースを丁寧に狙った球がボールと判定されてしまった」と指摘するように、苦しい立ち上がりだった。

 メッセンジャーは座りこんだり、天を仰ぐなど判定に不服な態度を見せた。これまでも判定に対する不満から自滅したことがあっただけにベンチは心配したが、指揮官が「判定にキレることなく、我慢して投げてくれた」と絶賛する粘投を披露した。

 チームを勝利に導き、かわいい後輩に最高の形でバトンを渡した兄貴分。藤浪の登板について「しっかり応援したい」と不敵な笑みを浮かべた。