阪神のマウロ・ゴメス内野手(29)が30日のヤクルト戦(甲子園)で復帰1打席目にいきなりタイムリー二塁打を叩き出した。29日は発熱のため欠場していた4番打者が戻ってくると虎打線も活気を取り戻し、5―4と逆転勝利。連敗も3でストップした。この頼れる4番の活躍を支えているのは“三種の神器”ならぬ「3種類のバット」だという。

 初回一死一、二塁の場面で打席に向かうゴメスを4万3000人の大歓声が出迎える。開幕から4番で全試合スタメン出場していた助っ人が前日は酷暑による体調不良と発熱のため今季初めて先発を外れた。ベンチ入りはしたものの、出番はなし。チームは完封負けを喫した。それだけに復帰した4番への期待は膨らむのも当然だろう。

 この声援にこたえるように三塁線を破るタイムリー二塁打。ゴメスは「まだ微熱はあるけど、昨日よりも体調はいい。声援をもらえてうれしかった。とにかく最初からベストを尽くそうという気持ちだった。久々にチームに貢献できて良かった」と笑顔で振り返った。

 この日も勝利に貢献したゴメスは開幕以来、白バット、黒バット、黒と白のツートンカラーなど様々なバットを使い分けている。どのバットを使用するかを決断するのはベンチの中。それもベンチを出る直前だ。チーム関係者は「ゴメスは3本のバットを持ってベンチに入る。1打席ごとにそれぞれのバットを手に握って感触を確かめている。微妙な違いがあるようで、その都度、一番手にフィットしたものを使っている」と明かす。

 実は、この3種類のバットは「重さや材質はほぼ同じもの」(チーム関係者)だという。ただ、同じ重さ、材質のバットでもゴメスにとっては自身の体調はもちろん湿度や気温などで微妙な差が生じる。常にベストのバットで投手と対戦するため打席ごとに一本一本のバットをしっかりと握り、感触をチェックしているのだ。

 打席では豪快なパワーが持ち味だが、その一方でベンチでは綿密な作業を繰り返している4番打者。和田監督も「ゴメスが4番にいることで他の選手もゴメスの前に走者をためて、という気持ちがより強くなる。打線につながりが出てくる」と認めるように虎打線には欠かせない存在になっている。この豪快さの裏にある繊細さも成功の秘訣だ。