サッカーW杯ブラジル大会で1勝もできないまま1次リーグ敗退した日本代表に、思わぬところから緊急エールが飛んだ。声の主はサッカーにも精通している楽天・星野仙一監督(67)で、「J(リーグ)の選手を増やした方がいい」と再建策を提言。日本代表監督に就任したハビエル・アギーレ監督(55)に闘将のアドバイスは届くか――。

 昨季、楽天を率いて日本一となった名将は知る人ぞ知るサッカー通でもある。評論家時代の1985年にNHK「サンデースポーツスペシャル(現サンデースポーツ)」の初代司会者になると、翌86年にはメキシコW杯を現地で取材し、準々決勝アルゼンチン―イングランド戦でマラドーナの伝説の“神の手”と5人抜きゴールを生で体感している。

 野球とサッカー。ジャンルは違えど同じ勝負事だけに戦術は通ずるものがあるというのが闘将の考え。「同じ1点でもサッカーと野球では重みが違う。投手にとって早めの味方の1点はかえって消耗する。むしろ1点だけならない方がいい」と持論を展開したこともあった。

 現在は最下位に低迷する自軍の立て直しに心血を注ぐ日々だが、常にスポーツ界全体を見渡している闘将はサッカー日本代表にも高い関心を持っている。惨敗に終わったブラジルW杯での戦いぶりについて話題が及ぶなり「今回の代表メンバーは最高のメンバーだったと思う。だけど、もっとJ(リーグ)の選手を入れた方が良かったな。海外組は連係の練習を重ねる時間が少なく、一瞬の判断の遅れが勝敗を分けた」と即答したほどだ。

 実際、優勝したドイツは代表23人中16人が国内リーグ組(W杯開催時、以下同)だった。それに対して日本はFW本田圭佑(ACミラン)、FW香川真司(マンチェスター・ユナイテッド)、DF長友佑都(インテル)ら海外組が中心で12人。昨季J1得点王のFW大久保嘉人(川崎)をサプライズ招集したが、国内組はわずか11人だった。欧州との距離の壁で連係に費やす時間が取れなかったことが敗因だというのが星野監督の分析だ。

 6月に胸椎黄色靱帯骨化症の手術を行った後は朝、昼、晩3度のウオーキングによるリハビリ以外の時間は「読書とテレビ」(星野監督)で過ごした。楽天の試合がない時は自然と開催中だったW杯観戦に時間を費やすことになり、日本代表と世界の差を実感。59日ぶりに現場復帰した24日の練習では「ブラジルは遠かった」とジョークで笑わせたが、現地観戦に勝るとも劣らないほどの真剣さで観戦した。2008年北京五輪では代表チームを率いる難しさも経験しており、いずれの発言もただの思いつきではない。

 闘将はサッカー人気も気にかけており「W杯代表に国内の選手を選ばないとJリーグが盛り上がらないだろ」とも話す。確かに観客動員でJリーグは野球に大きく後れを取っており、2013年プロ野球は2204万7491人(1試合平均2万5517人)だったのに対し、J1が527万1047人(1試合平均1万7226人)と伸び悩んでいる。

 代表が国内チームに数多くいることでJ人気が上がる。それが代表強化にもつながる――というのが星野理論。アギーレ新監督も“闘将の直言”に耳を傾けてもいいかもしれない。