巨人が29日のDeNA戦(京セラ)で1―9と大敗を喫した。相変わらずの貧打もさることながら、原辰徳監督(56)の期待を大きく裏切ったのが、5回途中12安打7失点と大炎上した先発の澤村拓一(26)だ。球界屈指の球威を持つ男が、なぜこうも崩れてしまうのか。チーム内からは、2年前のトラウマが指摘されている。
「彼の良さというものが今日は出なかった。それはフォローのしようがない」
試合後の原監督は怒りを通り越していた。川口投手総合コーチは「初戦を何とか頑張ってくれると思っていたが、期待外れだった」とさすがにがっかりした様子。二軍での再調整を決めた。敗戦でも報道陣に堂々と対応してきた澤村本人も「苦しい展開にしたのは僕の責任。ブルペンでは良かったけど、ブルペンと試合が違うようではいけない」と言葉少なに球場を後にした。
前回登板の阪神戦(21日、甲子園)同様、この日も先頭打者に簡単に出塁を許したうえに、失点するパターンだった。走者を出しても踏ん張れない試合が目立つ。その原因は一体何なのか。制球力など技術的な理由もあるだろうが…。最近チーム内ではこんな指摘をされている。
「四球とか、まずいと感じたプレーをすると、ベンチや(阿部)慎之助の様子を気にするそぶりがある。妙にソワソワし始めるんだよ」
周囲を気にするあまり、ペースを乱し、結果的に自滅に近い形で打ち込まれている。
澤村を萎縮させる原因について、別の関係者はこう指摘した。「やっぱり一昨年の日本シリーズではないか」。けん制のサインを見落とした澤村の頭を、阿部がマウンド上でポカリとやった一件だが、あれが澤村のトラウマになっているのでは、というのだ。
確かに若手投手にとって阿部は怖い存在ではある。中央大の直系の後輩である澤村にはなおさらで、前の関係者は「慎之助から歩み寄るのも(解決策の)一つなんだろうけど…」とはいうものの、そこはプロの世界。自分で乗り越えないといけない部分だろう。もっとも自分の投球ができている時は表に出ないが、不調になるとフラッシュバックしている可能性もある。
6連戦が続く終盤、澤村は必要不可欠な戦力。こうした周囲の声を払拭することができるか。