深刻な貧打に悩まされている巨人・原辰徳監督(56)が、ついに“家康モード”に切り替えた。阪神戦では長野を4番に据えた新打線が不発に終わって負け越し。嫌なムードで中日との3連戦を迎えた。指揮官はショック療法を封印し「鳴かぬなら、鳴くまで待とう、ホトトギス」とじっと打線の奮起を待つ構えでいるというが…。

 阪神との激闘から一夜明けた24日、チームは大阪から名古屋へ移動。一部野手と先発陣がナゴヤ球場で調整練習を行った。

 この日、主力野手陣は練習を免除され「体が張っていたのでほぐしたかった」と自分の意思で参加した井端や、不振の片岡、若手の橋本らを除き、大半のレギュラー陣が宿舎で休養。原監督も練習はコーチ陣に任せ、球場には姿を見せなかった。

 甲子園では相変わらず打線がサッパリだっただけに、この日も普段なら指揮官が自ら不振の野手陣に直接指導などして活を入れそうなものだが…。この日はあえて指名練習とした。これには原監督の心境の変化があるという。

 原監督のこれまでの指導や采配のスタイルは「鳴かぬなら、鳴かせてみよう」という“秀吉流”だった。打線が機能しなければ何度でもオーダーを組み直し、主軸に対しても容赦のない代打起用や犠打の指示を行ってプライドをくすぐり、選手を鼓舞してきた。

 だがその手法に選手の方が慣れてしまったのか、最近は効果が表れなくなった。むしろたびたび打順を降格されたり、代打を送られ続けたことで、自信喪失気味になっている選手もいる。

 そんな空気を感じ取ったのか、原監督は今回「鳴くまで待とう」の“家康流”のスタンスに。阪神3連戦で12打数2安打と結果を残せなかった新4番の長野について、川相ヘッドコーチは「直接聞いてはいないけど、監督なりの考えがあって決めたことだと思いますから、当分動かさないと僕は思っていますよ」と語った。

 なんとか1点差で勝って3連敗を阻止した前日の試合後、原監督は「打線が打線ですから…」と突き放すように言い放ったが、それも「『今回ばかりはお前たちの力で壁を乗り越えてみろ』という監督なりのメッセージですよ」(チーム関係者)という。

 原監督はさらに、周囲にはこんな覚悟を語っていた。阪神に連敗を喫し1・5差に迫られた22日の試合後「勝って勢いが付けばいいが、3タテを食らってもまだ0・5差で首位だ。むしろチャレンジャーの気持ちを思い出すいい機会になればいい」と語ったという。

 目先の結果を追うことをやめ、得意の“ショック療法”も一時封印した原監督。じたばたせず、じっくり腰を据えた戦いは巨大戦力を誇る巨人本来の戦いでもあるだけに注目だが…。果たして原監督の“我慢”はいつまで続くか。