2位・阪神が3・5ゲーム差で追う首位・巨人を本拠地甲子園で迎えた21日の後半戦開幕カードは3―0で阪神が快勝した。ヒーローは8回無失点の好投で8勝目(3敗)を挙げた岩田稔(30)。逆転Vのキーマンとなりつつある好調左腕が復活を果たした裏には、今季にかける悲壮な覚悟と変身があった。

 後半戦開幕の先発投手という重責を果たし、チームトップタイの8勝目を挙げた岩田は「テンポよくいけた」と満足そうに振り返った。7月は4戦4勝の好調左腕が「しっかり野手の方が守ってくれるので自分の投球ができた」と感謝するように鳥谷が3度の好守でもり立てるなど野手陣のバックアップも完璧だった。13日の巨人戦でも2点リードされた7回に代打を送られて交代したものの、その回に打線が4点を奪い逆転。岩田が勝利投手となった。

 岩田が先発した試合は投打の歯車がガッチリとかみ合うことが多くなってきたが、その理由についてコーチの一人は「覚悟に勝る決断なし。岩田の覚悟がチーム全体に好影響を及ぼしている」と分析する。

 昨シーズン、わずか9試合の登板で2勝5敗に終わるなど、3年連続で負け越したことで昨オフの秋季キャンプから「ローテーションをしっかり守らないと自分の野球人生も終わってしまう」と引退も覚悟している発言を繰り返した。

 そんな岩田の姿にナインも「そういう覚悟に僕らも応えなきゃダメでしょ」と発奮。球団関係者も「“ダメなら終わり”と話している岩田を『引退させるわけにはいかない』という思いは選手も持っている」と指摘する。

 もちろん岩田自身も“変身”した。チーム関係者は「昨季までの岩田はテンポが悪かった。捕手からボールを受けても投げるまでが長かったり…。でも今年はボールをもらって、すぐに投球に入る。一方で勝負どころはしっかり時間をかける。そんな“変わらなきゃ”という岩田の思いは他の選手にも伝わっている。チーム内にも『岩田を援護しよう』というムードができた」と説明する。

 節目の試合に抜てきした和田監督も「今日は岩田に尽きる」と絶賛。逆転Vローテには欠かせない存在だ。