阪神が16日の中日戦(ナゴヤドーム)に2―0で勝利して、前半戦を45勝38敗1分けの貯金7、2位の成績で終えた。首位・巨人とのゲーム差は3・5。果たして虎はここから逆転優勝できるのか。本紙評論家の宇野勝氏は、そのために絶対に必要な条件を挙げた。

【宇野勝 フルスイングの掟】昨年は後半戦になって2位・阪神が失速。逆に1位・巨人は勢いを増して独走状態となってリーグ優勝を決めた。今年も1位・巨人、2位・阪神で前半戦を終了。その時点の両チームのゲーム差も昨年が2・5で今年は3・5と同じようなものだ。ただ、今年は巨人の独走にはならず、混セになるのではないかとみている。

 その中で阪神が優勝するには、能見がエースとして完全復活すること。これは必要不可欠だ。ここまでは5勝8敗、防御率4・70と物足りない成績に終わっている。それでも阪神が2位にいるのは、メッセンジャーと藤浪が頑張っているからだが、この2人に優勝を背負わせるのは苦しい。やはり能見がエースとして引っ張っていかなければならない。

 優勝するためには先発だけが良くてもダメ。先発が崩れたから負けましたでは勝負にならない。今の野球では中継ぎが貴重。負けている展開でも何とか中継ぎが我慢しながら7、8、9回で逆転して1つでも2つでも勝ちを拾う。これがどれだけできるかどうかでペナントレースの行方は大きく変わってくる。

 阪神の中継ぎ陣は福原、加藤などベテランが多い。本拠地は屋外の甲子園球場。ドーム球場が本拠地の巨人や中日に比べて夏場に入るとバテるのも早くなってくると思う。そこをどう乗り切るかは阪神にとって重要。そこで必要となってくるのは若手投手の台頭だが、ここへきて金田と二神が中継ぎでいいボールを投げている。この2人がベテランに代わるぐらいの力を発揮すれば優勝も近づく。

 阪神は現在、三塁を固定せずに新井貴、今成、西岡らを試合に応じて起用している。おそらく選手の調子や相手投手の右、左などでスタメンを決めているのだろう。あれだけ実力のある選手がたくさんいれば、そうしたやり方も悪くないが、私は新井貴をベンチに置くのはもったいないと思う。スタメンで使ってほしい。調子がなかなか上がってこなかったことで、スタメンから外れるケースが多くなったのだろうが、最近の打撃を見ていると十分に良くなっている。

 右の代打には関本もいるし、何より新井貴はリーダーシップの取れる選手。優勝争いをしている時にはそうした人間が必要になってくる。調子が良い時ばかりではない。悪い時もある。でも、あえて我慢して使うことも必要。そうすれば新井貴は意気に感じるもの。優勝争いのギリギリの場面ではこうした精神的なことが重要になってくる。

 ルーキー捕手の梅野は非常に良くやっている。リードやスローイングなど無難にこなしているし、打撃もいい。しかし、イケイケドンドンだけではダメ。二死走者なしでも、無死一塁の場面でも同じようにブンブン振っている。思い切りが良いのは素晴らしいが、相手が嫌がることも考えなければいけない。打てないのはしょうがないが、できることはある。ストライク、ボールをしっかりと見極めて、苦しい時に四球を1つ選べる。優勝するためにはそうしたことも大事になってくる。

 阪神全体に言えることだが、少々プレーが雑に見える。例えば、16日の試合の4回に二塁走者の上本が一死からの中飛で飛び出し併殺となった走塁などはその典型。1つの細かいプレーが大きな1勝ともなれば、大きな1敗ともなる。そうした1つの勝敗が優勝に直結する。このことを阪神ナインは肝に銘じることも逆転優勝には必要だ。(本紙評論家)