【大下剛史 熱血球論】広島が負のスパイラルから抜け出せない。苦手の交流戦は10日現在、今季ワーストの6連敗中、4勝12敗で最下位だ。8日には1か月近く守り抜いてきたセ・リーグ首位の座からも陥落したが、ここへきて痛恨は快進撃を支えてきたセットアッパー・一岡竜司(23)が右肩痛で登録抹消となってしまったこと。このアクシデントは未然に防ぐことはできなかったのか。本紙専属評論家の大下剛史氏はチームのマネジメント能力に疑問を投げかけた。

 これは「人災」と指摘されても仕方がないだろう。右肩痛で登録抹消となった広島の一岡のことだ。

 開幕からセットアッパーとして活躍してきた若き右腕の戦線離脱は、ただでさえ投手陣がガタガタになっているチームにとって大きな痛手。しかし、このアクシデントを招いてしまった責任は管理能力が欠如していたチーム側にあると言わざるを得ない。

 一岡の右肩が悲鳴を上げたのは、8日のオリックス戦登板後。本来ならば勝利の方程式の一角を担うはずが、その日は7点をリードされている9回にマウンドに立った。中6日と間隔が開いていたことで首脳陣は調整目的で登板させたのだろうが、その直後に一岡が痛みを訴えたのだから「なぜ、あの展開で無理に起用しなければならなかったのか」と突っ込みを入れられても言い訳はできまい。

 断言はできないが、ここまで23試合に登板して自責点2、防御率0・78と申し分ない活躍をしていた半面、ブルペンの柱に据えて頼り続けてきたフル稼働の疲労が知らず知らずのうちに蓄積し、右肩痛の症状となって現れたことも十分考えられる。

 結果論でイチャモンをつけているわけではない。プロ3年目とはいえ、一岡はルーキー投手みたいなもの。巨人時代は一軍定着の経験がなかったということを、もしかして首脳陣は一岡が期待以上の活躍を見せてくれたあまりに、ふと忘れてしまっていたのではないだろうか。

 初めて大役を任された選手は誰だって意気に感じて懸命になる。これはもちろん、とても大事なことだが、ここで気をつけなければならないのはマネジメントする立場の人間だ。ベテランや中堅クラスならばいざ知らず、若い選手の多くは大役を全うしなければポジションがなくなると思って少々の問題が体に発生していても報告せずに我慢してしまう傾向がある。だからこそ、チームは一岡のような若い選手のコンディション管理に対しては必要以上に目を配らなければならない。パンクする危険性を事前に察知して休ませるのも、首脳陣やチームスタッフの仕事だ。
 だが、もう起きてしまったことはどうにもならない。

 チームは“一岡の悲劇”を教訓とし、コンディショニングチェックの態勢をいま一度見直すべきであろう。そして一岡の一刻も早い復帰を願うのは無論、代役となるべき今村ら他のブルペン要員が逆にアピールチャンスととらえて一念発起することを求めたい。エース・前田も左脇腹の張りで12日の西武戦先発登板を回避するなど、今のカープは投壊状態と言える。その危機を誰が救うのかが楽しみである。

(本紙専属評論家)