<前田幸長の直球勝負>巨人が8日のロッテ戦(東京ドーム)に8―1で勝ち、4月10日以来となるセ・リーグ単独首位に躍り出た。打線も活気づいてきたが、一方で無安打に終わったのが阿部慎之助捕手(35)だ。7日の西武戦で通算1000打点を記録する本塁打を放ったものの、いまだ本調子には至っていない。その胸中を本紙評論家・前田幸長氏が直撃。そこで出た主将の“覚悟”とは――。

 やはりまだ痛いのではないだろうか。なかなか調子の上がらない慎之助の打撃を見てどうしても感じてしまうのは、5月1日に表面化した「首の痛み」だ。打撃不振の理由を率直に聞いたとき、慎之助の口から出たのは「グアム(自主トレ)の時から(痛む)感じがあったが、治らないんですよね。もう若くないから付き合っていかないといけないですね」という言葉だったからだ。

 通算1000打点を達成したばかり。この記録も偉大だが、本人のもう一つのこだわりは、あと16本に迫った尊敬する掛布さん(阪神・掛布雅之GM付育成&打撃コーディネーター)の349本塁打だ。満身創痍とはいえ、慎之助の打撃はチームに必要不可欠。チームへの貢献とともに記録を達成するためにも「一塁コンバート」という案もあるだろう。慎之助にあえてその意思を尋ねると「(コンバートすることで)どのくらい打つか見たいのでしょうけど…」と笑いながらこう返してきた。「でも生涯捕手です」

 この返事に関しては正直、察しはついていたが、興味深かったのは次のひと言だった。「自分の中での目標はクリアできているので」。“捕手として悔いなくやれているからこそ、どんなことがあっても最後まで務め上げたい”慎之助の決意を感じずにはいられなかった。

 この日は小山が初の完投勝利。再びセ・リーグ首位に立ったが、その戦いぶりには余裕を感じない。小山に一定のメドは立ったとはいえ、テツ(内海)の離脱、杉内もいまだに不安定さをのぞかせている。日々総力戦の様相だ。中継ぎ陣に関しても「時間が解決してくれますよ。心配はしていません」(阿部)と言ってはいたが、まだ落ち着いていない状況だ。

 この苦境を慎之助がどう乗り越えていくのか。体が心配ではあるが、これからも注目して見ていきたいと思っている。(本紙評論家)