勝っても素直に喜べない――。タナボタの逆転勝利で21日の西武戦(西武ドーム)を4―3で制した巨人ベンチで、ひとり意気消沈だったのが、この日の先発・大竹寛投手(31)だ。序盤に3点を奪われ、3回持たずに降板。ここ4試合で計15失点という打たれっぷりに、古巣・広島からはなんとも強烈なブラックジョークまで浴びせられているという。

 自身の31回目の誕生日に無念のKOをくらった大竹は、逆転勝利に沸くチームメートとは対照的に「自分のボールが投げられていない。修正できていない。ブルペンでも正直良くなかった。低めに集めていこうと思ったのですが。明らかにいいときのボールと違う」と反省の言葉を並べた。

 期待のFA右腕として巨人入り。チーム2位の5勝(2敗)を挙げているものの、いまだ無失点で終えた試合はない。防御率も4・85とパッとせず、この試合でもボールのキレや投球のテンポが悪く、試合展開を重いものにしていた。

 そんな現状とあって、周辺からは厳しい声が寄せられ始めたという。球団事務所にも抗議の電話がチラホラかかってくるそうだが、関係者が「耳が痛い」とこぼすのは、大竹を獲得した際の人的補償として一岡竜司投手(23)を放出したことに関する苦情だ。

 現在、一岡は広島のセットアッパーに定着。18試合に登板し、いまだ防御率0・00をキープしている。かたや巨人はリリーフ陣が崩壊寸前。「一岡がいれば…」とファンが嘆くのも無理はない。

 もっとショッキングな話もある。巨人関係者が広島の関係者との雑談中に浴びせられた言葉だ。「そういえば、一岡の人的補償の大竹くんは元気にやってるの?」。皮肉たっぷりのブラックジョークに、巨人関係者の頬が引きつったのは想像に難くない。

 原監督は、早々に大竹を降板させた理由について「ずっとローテーションを守っている投手だし、あそこを(最後まで)投げさせるという手もありますけど、今日に関しては早めにバトンを渡して次の登板にいくという選択しました」と語った。その口調こそ穏やかだったが、裏を返せば“そろそろビシッと抑えてほしい”という期待の裏返しと言える。

 巨人で「常勝」を求められるのは移籍前から分かっていたはず。新天地で期待に応え、嘲笑する古巣を見返すためにも、大竹は「結果」を出すしかない。