巨人・原辰徳監督(55)が首脳陣に大ナタを振るった。9―1で快勝した交流戦開幕戦の西武戦(20日=西武ドーム)で、コーチ陣の顔ぶれに異変が起きた。指揮官が村田真一打撃コーチ(50)をバッテリー担当兼任に、吉原孝介バッテリーコーチ(45)をブルペン担当とする配置転換を断行したのだ。シーズン中では異例の決断の裏で何があったのか――。

 試合前の巨人ベンチは異様なピリピリムードに包まれていた。あわただしく動き回るコーチ陣の表情は一様に厳しい。その理由が判明したのは、ベンチ前で捕手陣の練習が始まったときだった。

 ルーキー小林を指導していたのは村田打撃コーチ。その後ろで少し離れて吉原バッテリーコーチが所在なさげに立っていた。村田コーチは捕手出身だが、巨人のコーチは役割が明確に分かれている。担当外の練習に加わることはほぼない。つまり“配置転換”が行われたことを示していた。

 選手も戸惑いの色を隠せない。主力野手は「なんで村田コーチが入っているんですか?」と首をかしげた。若手投手は「バッテリーミーティングに村田コーチが入っていたから、みんな『なんで?』と思っていた」という。

 なんとも落ち着かない雰囲気で始まった試合だったが、先発の杉内が7回1失点と快投を演じると、主砲セペダが先制犠飛に2号ソロと2打点と活躍。坂本が節目の1000安打を放てば、不振の阿部も2安打2打点と久々に存在感を示し、交流戦白星スタートを飾った。ちなみに吉原コーチはベンチ入り登録はされていたが、この日はブルペンで試合を見守った。

 試合後、原監督は配置転換について「コーチそのものはまったく変わらない。ただチームが勝つために、配置を換えたところがあるというだけ」と説明した。

 今回の人事の引き金となったのは3連敗を喫した前回ヤクルト戦にあったようだ。スタッフの一人は「(3―10で敗れた)ひたちなかでの試合後ミーティングで、川相ヘッドが吉原コーチを厳しく叱責したんです。一番の理由は先発の今村が内角を攻め切れなかったこと。『チーム方針に沿った配球指示ができていない』ということだったと聞いています」。また別のスタッフは「吉原さんは小林への指導に熱を上げる一方、阿部には何も言えず野放しだった。そういう点も問題視されたんでしょう」と指摘した。

 原監督は大敗したひたちなかでのヤクルト戦後「今村は悪くない。悪いのは、彼を先発させた私と指導できないコーチ陣」という意味深な言葉を残していたが、それを踏まえて動いた結果が、今回の吉原コーチの“降格人事”だったというわけだ。

 この日の試合後は、原沢球団代表が暗い顔の吉原コーチの肩を抱き寄せて激励の言葉をかけていたが…。なんともドタバタしてきた巨人のベンチ裏。コーチの配置転換という荒療治は浮上のきっかけになるのだろうか。