いつになれば左腕に勝利の女神はほほ笑んでくれるのか――。巨人・内海哲也投手が10日の阪神戦に先発し7回7安打3失点の奮投も勝ち負けは付かず、7度目の登板でも今季初勝利はならなかった。またも白星を手にできなかった“元エース”を取り巻く空気は重苦しくなるばかり。野手陣の「勝たせよう」という思いも空回りしている。

 この日は延長10回にアンダーソンが熱戦にケリをつける一発を放ったが、野手陣の「勝たせよう」という思いも空回りしている。

 特別どこかが悪いということもない。それでも勝てないのはなぜなのか。内海の立ち上がりは順調な滑り出しだった。3回には同級生で社会人時代の同僚でもある片岡の先制打で1点援護をもらうと、序盤3イニングは低めに変化球を集めて2安打無失点に抑えた。

 ところが「今日こそは…」という楽観ムードが流れ始めた直後の4回、一死からゴメスにフェンス直撃の二塁打を許すと空気が一変する。二死一、二塁までたどり着いたが踏ん張りきれず、虎の下位打線につかまった。

 かつての女房役だった7番・鶴岡に7球粘られてからの8球目スライダーを右前に運ばれて同点とされると、8番・柴田にも中前に弾き返されて逆転を許してしまった。「内海らしい粘りの投球を続けてほしい」という川口投手総合コーチの願いは届かず、内海は続く5回も先頭の大和に許した二塁打をきっかけに3点目を献上すると、中継では暗い顔が並ぶ巨人ベンチが映し出された。

 先制適時打を放った片岡が「『内海に先制点を』という気持ちだけだった」と話したように、野手は「なんとか内海に白星を付けよう」と必死だ。だが試合を重ねるたび、それが逆に重圧になる悪循環を生んでいる。スタッフの一人は「内海の試合はみんな気持ちが入りすぎて、スイングが硬くなっている」と指摘した。

 阪神先発の榎田は抜群には見えなかったが、打線は散発4安打で6回1点に抑えられた。ようやく反撃を開始したのは8回だった。先頭の内海に代打・高橋由が送られると、ベンチの顔付きが変わった。

 一死から坂本が二塁打で出塁すると、片岡が阪神3番手・福原からこの日2本目の適時打を放ち1点差。さらに二死一、二塁で内海から選手会長のバトンを受けた村田が、意地の同点適時二塁打を放ち、なんとか内海の黒星だけは消した。

 内海が白星に恵まれない一方、新エースを襲名した菅野は負けなしの6連勝と明暗がくっきり分かれている。それでも巨人関係者は口を揃えて「ウチの投手陣リーダーは内海。彼が勝たないことにはチーム全体も乗っていけない」と話す。

 チーム状態は悪くないが、どこか本調子ではない今季の巨人。初白星が早く欲しいのは、内海本人だけではない。