ノーヒッター岸 偉業達成の裏に家族の支え

2014年05月04日 16時00分

 西武の岸孝之投手(29)が2日のロッテ戦(QVCマリン)で、ノーヒットノーランを達成した。昨年6月28日のDeNA戦(横浜)で中日・山井大介が記録して以来、史上78人目、89度目。西武では1996年6月11日のオリックス戦(西武)での渡辺久信以来となる18年ぶりの記録となったが、その裏では“あの試合”の時と同様、ボールのキレが戻っていたという。試合は2―0で西武が勝ち、岸は今季3勝目(2敗)をマークした。

 

「まさかこういう記録ができるとは思わなかったので、すごくうれしい」

 

 偉業達成後、岸は遠慮がちにはにかんだが、投球内容は「圧巻」のひと言だった。「このところ感じがいい」という伸びのある直球でグイグイ押し、最後までその球威は落ちなかった。打者28人に対し、走者を許したのは初回二死から井口に与えた四球1つだけ。二塁も踏ませぬピッチングで、内野ゴロは7、フライアウトは12個を数え、三振は8つ奪った。“準完全”とも言える完璧なピッチングは、ロッテ・伊東監督を「相手を褒めるしかないでしょう。失投がほとんどなかった」と脱帽させた。

 

 そんな岸について、岸の入団2年目となる08年から4年間投手コーチ(10年は二軍投手コーチ)を務めた恩師である小野和義氏(48=現球団編成部)は「今年の岸の直球は西武が日本一になった08年当時のキレに戻っている」と目を細めた。

 

 08年、岸はシーズン12勝を挙げリーグ優勝に貢献すると、巨人との日本シリーズでも2戦2勝の大活躍でシリーズMVPを獲得した。

 

 キレのある直球と大きなカーブのコンビネーションで巨人打線をキリキリ舞いさせたその投げっぷりは、全国の野球ファンに強烈な印象を与えたが、その後の岸はといえばイマイチ。7年間のキャリアで6度の2桁勝利をマークするなど安定した成績を残してはいるものの、自己最多は09年の13勝で大きなタイトルとも無縁だった。

 

 だが昨オフ、球団は今年FA権を取得する岸と3年最高12億円の大型契約を結んだ。小野氏は「涌井(FA)や(石井)一久(引退)がいなくなって岸にエースの自覚が出てきた。今年をキャリアハイにしようという意気込みが見えている」という。

 

 もともと岸は見た目によらず「負けん気が強くすぐにカッとなっていた」(小野氏)という性格。それが落ち着いたのは09年に結婚してからだという。

 

「今でも体重70キロと太れない体質の岸のために奥さんは料理が上手で栄養にも気を使っていた。岸にとって支えになっていた」(同)

 

 第1子も生まれた岸は「家族が支えです」と話し、精神面から崩れることは少なくなった。直球、カーブ、チェンジアップと緩急を生かした投球術も円熟味を帯びてきた。小野氏は「年齢的にも今年は突き抜ける年」とも断言しており、あの日本シリーズ時のボールのキレを、安定して出せるようになった今なら…。一気に球界を代表する投手として再び注目を集めることは間違いない。

 

 現在10勝20敗の借金10、チーム得点が92点とパ最低の西武にとっても、岸のノーヒッターは明るい話題となった。