阪神の新4番、マウロ・ゴメス内野手(29)が17日の広島戦(マツダ)で来日初アーチを放った。開幕から18試合目。本塁打不足を解消するために獲得した助っ人だけに待ちに待った今季1号だ。この待望の一発の裏には歓喜のハイタッチならぬ「おでこタッチ」という珍儀式が存在していた。

 78打席目に飛び出した1号ソロ。ベースを1周してベンチに戻ったゴメスは満面の笑みを浮かべていた。「1本出てホッとした」。4回一死走者なしからバックスクリーンに突き刺さる豪快な一発。開幕から18試合連続出塁、打率3割3分8厘、17打点と好スタートを切ったものの最も期待されていた本塁打が出ていなかったことでバットを替えるなど試行錯誤を繰り返していた。この日も福留のバットを使用しており、ゴメスは「お願いして借りた。振った感じが良かった。それがいい結果につながった」と満足そうに振り返った。

 和田監督も「本人もなかなか(本塁打が)出ないことを気にしていたみたい。これですっきりできるんじゃないか」と胸をなでおろした。ようやく飛び出した本塁打を祝福するナインと笑顔でハイタッチを交わしたゴメス。実は、この歓喜の儀式を格別な思いで味わっていた。

 そのワケは開幕直後にナインとゴメスの間でこんなやりとりがあったからだ。選手の一人がゴメスに「初ホームランが出るまで、ハイタッチをしてやらない。その代わりにおでこタッチをしてやる」と冗談交じりに提案。これに対してゴメスは笑顔で「分かった。やってやろうじゃないか」と了承したという。

 どの球団でもヒットを打つなど結果を出した選手がベンチに凱旋した時にハイタッチで迎えるのが恒例となっている。この儀式をあえて別の形にすることでゴメスのモチベーションアップにつなげたのだ。

 本塁打が飛び出したことでお互いの額をペチッとタッチする“おでこタッチ”から晴れて卒業。試合には2―8と完敗を喫したものの、主砲の一発という大きな収穫を得る一戦となった。