阪神が15日の広島戦(マツダ)に8―2で快勝し、昨年7月以来の6連勝だ。立役者は先発の藤浪晋太郎(20)。7回2失点投球で今季初勝利をマークし、打ってもプロ初本塁打と大活躍だったが、球団サイドは、そんな2年目右腕のさらなる“活用”を考えている。それは…。

 今季3試合目の登板での白星。藤浪は「正直ほっとした。勝ち取った感じではないが、1つ勝たせてもらって次に乗っていけるようにしたい」と話した。6回には右中間席へプロ1号を放つおまけ付き。これには「自分でもびっくり」とにっこりだ。

 先発3本柱の一人として大きな期待を背負う2年目右腕だが、本業以外での注目度も高い。すでに家電量販店のCMや阪神電鉄本社のPRに起用されるなどグラウンド外でも大活躍。その上に「タイガースの顔」として本格的に“韓国デビュー″させるプランが浮上している。

 今季、韓国最強ストッパーの呉昇桓が入団。これを契機に阪神でも韓国の野球ファン獲得に力を入れている。この営業戦略に藤浪も参戦させるという計画だ。

 なぜ藤浪なのか。実は意外にも韓国での藤浪の知名度は非常に高い。韓国メディア関係者は「今、藤浪選手は韓国で話題になっているんです。彼は高卒選手にもかかわらず昨年10勝している。韓国では柳賢振(リュ・ヒョンジン=現ドジャース)以来、目立った新人選手がいないから藤浪の活躍はニュースなんです」と説明する。

 柳賢振は高卒ルーキーだった2006年に18勝を挙げて新人王とMVPを獲得。後に韓国球界のエースに成長し、韓国では絶大な人気を誇っている。このスター選手と同じように1年目から2桁勝利をマークした藤浪も「日本にすごい選手がいる」と韓国では認識されているのだという。呉昇桓も「藤浪のことは韓国のテレビで投げている姿を見て知っていた」と阪神入団前に知る唯一の選手として挙げていた。

 この現象に球団関係者は「呉昇桓の入団で阪神が韓国で認知され始めた。そこに藤浪という別のコンテンツを加えれば甲子園に人を呼ぶ流れができると思う。チームに興味を持ってもらうためにも藤浪をどんどん売り込んでいきたい」。クローザーの呉昇桓は試合展開によって登板機会が左右されるため観戦プランが立てにくい。一方、先発の藤浪は登板予定が予想しやすいこともあり、甲子園観戦ツアーの目玉として期待が高まっているのだ。韓国市場拡大の秘密兵器。様々な期待を背負う藤浪にまた新たな“任務”が加わった。