広島は12日の中日戦(マツダ)を5―0でものにしてカード勝ち越しを決め、再び単独首位に浮上した。とはいえ喜んではいられない。この試合に先発したエース・前田が5回を投げたところで降板。試合後、右ヒジ裏の「上腕三頭筋付着部炎」と診断されたからだ。本人は軽症を強調したが、今後の登板は未定。長期離脱を避けるため、野村監督は慎重に対応する方針だ。

 5回の攻撃で打席に立ちながら、6回のマウンドに上がったのはマエケンではなく、中田だった。5回を投げ終えた時点での投球数は66球。完封も視野に入る状況でのエースの降板は、通常ならあり得ない。試合後、本人は右ヒジに異常が発生したことを明かし「ちょっと大事を取らせてもらった。あまり今日はよくないなと思っていて5回終わったときに厳しいなと感じて申し出た。リリーフの人に迷惑を掛けてしまったが、無理していくより代わったほうがチームのためだと思った」と説明した。

 試合後に病院には行かなかったが、球場にいたチームドクターから「上腕三頭筋付着部炎」と診断された。今後はアイシングや電気治療で様子を見る予定だ。昨年8月6日の阪神戦でも右ヒジの張りで降板したようにこれまでも経験したことがあるが、大黒柱だけに長期離脱だけは避けたいところだ。

 野村監督は「明後日くらいまで様子を見る。(登板の)間隔を延ばす可能性はある。本人は『そこまでではないです』と言っていたが、状況によっては登録を外すこともある。無理はさせられない」と慎重に対応していく考えだ。次回登板は未定。回復具合によっては、一度登録を抹消することも想定している。

 緊急事態が起こるまではエースらしい粘りだった。初回の一死三塁のピンチを無失点で切り抜けると、その後は緩急を生かした投球で竜打線をわずか1安打に封じた。ナショナルズの環太平洋地域コーディネーターのマーティン・ブラウン氏、タイヤモンドバックスのマック林スカウトら、視察に訪れたメジャー関係者の前でエースの力を見せていた。

 そんな中でのまさかのアクシデント発生…。前田は「(今後については)様子を見て話し合って決めると思う。そんなに大ごとではないと自分では思っている」と冷静に話したが、23年ぶりのリーグ制覇のためには欠かせない存在だけに大事に至らないことを祈るばかりだ。