【ズームアップ甲子園(21日):神村学園(鹿児島)6−1岩国(山口)】まさに試合を決定づける一発だった。1点リードで迎えた7回、二死一、三塁。ここで神村学園の山本は内角低めにきた、126キロのスライダーをきっちりと捉えると渾身の力で振り抜いた。ライナー性の打球は右翼ポール際に飛び込む今大会1号3ランとなった。

「逆風のおかげで切れずに入ってくれた。気持ち良かった」

 1、4回と好機で凡退するなど、山本は序盤は相手投手・柳川のスライダーに苦しめられた。3打席目も中飛に倒れたが、これでタイミングが「分かった」という。この打席での凡退が、次の本塁打につながった。

 チームは7回から持ち前の強力打線が一丸となって本領を発揮し、岩国を圧倒。小田監督は「切れ味の鋭いスライダーを見逃して、ベルトゾーンの球を捉えられた。選手のおかげで勝つことができた」と目を細めた。

 神村学園が緊張する開幕試合を制することができたのは、選手と監督の間でやりとりされている“愛の交換日記”のおかげといっていいだろう。

 昨秋、小田監督が就任し、ナインは野球日誌を毎日提出することを義務付けられた。それまでは練習試合のあとに少し書く程度だったが、小田監督から命じられてからは午後9時15分から30分間行われる「黙学の時間」にみっちりと書くようになった。

 ある選手は「10行以上と言われているんですけど、大抵みんな半ページは書きますね」。文字だけでなく、時にはイラストも交えてその日の練習や試合を振り返る。それに監督がコメントして返してくれる。「練習中、言いにくかったことも言える。監督の考えもわかって、意思疎通がすごくスムーズになりました」

 もちろん今回のセンバツで大阪入りしてからも小田監督とナインの“交換日記”は継続している。そんな日頃のやり取りがあってこそ、この日のようなチーム一丸となった狙い撃ち作戦につながった。

 完投したエース東は「焦りもあったが、みんなに助けられて投げきることができた」。団結力を増した神村学園ナイン。次は福知山成美(京都)を相手に、力を爆発させる。