巨人・菅野智之投手(24)が自身初の開幕投手を務めることが確実となった。“最終試験”となった15日のソフトバンク戦(ヤフオクドーム)でチームは2ー4の逆転負けを喫したが、菅野は6回5安打1失点と好投し、実力で大役を手繰り寄せた。そして結果以上に圧巻だったのが投球内容だ。2年目右腕は、同僚も驚くスピードで進化していた。



 この日の菅野は異次元で戦っていたといい。6回83球を投げ、5安打1失点。5回2安打無失点と完璧だった前回オリックス戦にくらべれば見劣りする。だがこの日、菅野は“2種類のフォーク”を使い分け、三振を7つ奪ったことに手応えを感じていた。


 初回一死二塁で強打者の内川をカウント2ー2と追い込むと、外角ボールゾーンへふわっと落ちながら逃げていくフォークで三振を奪った。これが菅野が言う「カット気味のフォーク」だ。一方、柳田や長谷川に対しては「真下に落ちるフォーク」で同じく三振に斬った。


 フォークをコントロールし、種類を使い分ける投手といえばレッドソックスの守護神・上原ぐらいのもの。昨年の日本シリーズで解禁したばかりの武器を短い期間でウイニングショットとして使えるまでに磨き上げ、今年初バッテリーを組んだ阿部を驚かせた。


 4回には自らの打球処理ミスもあり無死一、三塁の危機を招いたが、松田に対しては外角スライダーで狙い通りの併殺打。この回を1失点で切り抜けると、ここでも阿部を「ああいうところで冷静に考えられるところがさすが」とうならせた。


 この日は直球も走った。柳田に対しては「去年(交流戦で)完封がかかっていた試合で打たれて悔しい思いをした。『去年の自分とは違うんだぞ』というところを見せられた」と真っ直ぐ一本勝負。2回は内野安打を許したが、4回は空振り三振でリベンジを果たした。


 余裕の投球同様、コメントもすでにエースの風格が漂う。「試合の流れをコントロールしながら、力で圧倒し、時に変化球で打ち取る。だいぶ自分が思い描いている投球に近づいている」と菅野。前日には川口投手総合コーチが完投増を指令したが「あまり興味はないですね。それよりもシーズン通して6、7回安定して投げ続けるほうが価値がある」と芯もブレない。


 原監督は「リズムが良かった。いいスタートラインに付けるという予測はできる」と高評価を与え、開幕投手指名を決断したことをにおわせた。


 チームは16日、大分でのソフトバンク戦後に帰京し、週半ばには財界人による巨人後援組織「燦々会」の総会が予定されている。球団フロントは「監督はそこで開幕は菅野でいくと発表するだろう」。上原以来となる2年目開幕投手誕生の瞬間が近づいてきた。