巨大戦力ではなかったのか。巨人が12日のロッテ戦(QVC)で16安打と打線が爆発。12―5と大勝したが、この試合ではとんだドタバタ劇が起きていた。というのも藤村大介内野手(24)を、キャンプでも練習していないセンターで起用。実は選手層が薄かったことを露呈してしまったことで、他球団007からは失笑が漏れたのだ。大丈夫なのか…。

 この日のロッテ戦、村田―阿部の主砲アベック弾も飛び出すなど、景気のいい試合内容だったにもかかわらず、最も注目を集めたのは、藤村だった。原監督が繰り出した“奇策”にネット裏が騒然となったのは3回。それまで2三振の橋本に代わり、藤村が中堅の守備に就いた。本人によると「(外野は)1年目のイースタンでやった以来」というが、ここ数年は練習でさえ外野を守ったことはない。それでも藤村は守備を無難にこなすと、打席でも2安打を放って存在をアピールした。

 3回の時点では、まだベンチに中堅が本職の大田も残っていた。どういう意図で藤村を中堅守備に就かせたのか。試合後、原監督は「藤村も6年目。それぐらいの順応力はあるでしょう。いい形でここまできているので、思い切って使ってみた」と説明した。

 藤村の守備について、大西外野守備走塁コーチは「足が速いし、それなりに(球を)捕って、カットまで投げられればなんとかなる」と話すと、シーズン中の中堅起用についても「可能性はあるんちゃうかな」と話した。

 だが本気でシーズンも外野で起用するつもりならば、なぜキャンプから練習させなかったのか。思いつきにも見える藤村の中堅起用は、巨人ベンチのイラ立ちとドタバタぶりの表れでもある。

 今季は内野に片岡、井端が加入して戦力の厚みは増したが、若手が伸び悩む外野はというと、実は“戦力不足”。長野以外シーズン通してレギュラーを張れる選手が見あたらず、亀井が右人さし指を骨折して離脱したこともあって、余計に層が薄くなっている。中堅に限ればさらに人材難だ。

 橋本や大田に期待をかけていた原監督は「中堅という位置でだらしない人が多すぎる」とボヤき、大西コーチも「外野手がしっかりせなあかん。泰示(大田)しかり、到(橋本)しかり」と本職コンビに苦言を呈した。

 藤村にポジションを“奪われた”橋本と大田は、試合後は揃って「悔しかった」と唇をかんだが…。ネット裏の他球団のスコアラーたちは、一様に驚きの表情を見せながらも「さすがにシーズンではやらないでしょ」などとニヤニヤ。巨大戦力が売りのはずの巨人が、ライバル球団につけ入るスキを与えてしまったことは間違いないようだ。