今年ここまでの巨人でもっとも注目を浴びたのは、2月の宮崎キャンプで臨時コーチを務めたOBの松井秀喜氏(39)。12年ぶりの“古巣復帰”にはファンもメディアも大いに沸いた。そんななか、特別な感慨にふけっていたのが高橋由伸外野手(38)だ。その目に指導者として帰ってきた先輩の姿はどう映ったのか。また、同じ時間を過ごしたことで得たものは? ヨシノブの本音に迫った。

 ――ここまでの調整具合はどうですか?


 高橋由:いたって普通。可もなく不可もなくっていう感じですね。


 ――2月の宮崎キャンプは特別な雰囲気だった


 高橋由:松井さんが来たからね。周りもザワザワしていたし。僕はもう一緒のグラウンドに立つことは二度とないだろうなと思っていたので、懐かしさというか不思議な感じはありました。


 ――以前、野球の話をしてみたいと話していた

 高橋由:実は結局、ほとんどそういう話はしなかったんですよ。松井さんと一緒にやったこともない若い選手が「これはどうしたらいいですか」「こういうときはどうするんですか」って聞いているのを、横でこうやって(耳に手を当てるポーズをして)聞き耳を立てて聞いていました(笑い)。どういう言葉で選手に教えるのかというのも興味があったので、聞かせてもらっていました。


 ――心に残った言葉は?

 高橋由:具体的にはないんだけど、どういうことを意識しながら野球やっているのかなとか、今までは自分が想像していただけだったのが「ああ、やっぱり松井さんもそうだったんだ」というようなことは、いくつかありました。技術論というより心構えですね。直接言われたことといえば「元気だったら大丈夫だから頑張れよ」とか「できるんだったら続けろよ」ってことぐらい。


 ――以前は「松井さんがコーチで自分が選手という立場が想像できない」とも話していた


 高橋由:臨時コーチとしてきたけど、実際はそういう感じじゃなくて、一緒にやっていた選手が戻ってきて同じグラウンドにいる…というような感じだったですね。

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キャンプ順調も「いつ辞めるかというのは、常に頭にある」


 ――サンマリン球場で5本の柵越えを放った松井氏のフリー打撃を見て


 高橋由:すごいよね。1年間やっていなくてさ。本人は不本意かもしれないけど、それでもあれだけの打球を打つんだから、すごい。俺だったら1年バットを振らなかった絶対に打てないもん。


 ――若い選手の中には「自信をなくす」とつぶやく選手もいた


 高橋由:同じ土俵で比較するのが失礼でしょ(笑い)。僕はずっと一緒にやっていたけど、間近で見たことがない選手たちが「これが本物のメジャーリーガーか」っていうのを見られたことが良かったんじゃないかな。


 ――“松井打撃投手”を相手にフリー打撃もした


 高橋由:緊張感とも違う、どこか不思議な感覚がありましたね。言葉に表せないものが伝わってきたというか。正直言うと、あのとき(2月4日)本当はまだ打ちたくなかった。でも、もしかしたら、もう松井さんの球を打つタイミングなんてないかもしれないなと思ってね。「チャンスだな、投げてもらおうか」って。結果的にすごくいい刺激になりました。やって良かったなと思っています。あのへんからペースが上がっていったのが不思議だな、と自分では感じているんですけど。


 ――例年になく元気な印象だが、今はもう引退も頭から消えたのでは?


 高橋由:いつ辞めるかというのは、常に頭にありますよ。でも松井さんが引退するときに個人的にやり取りがあって、そしてあのセレモニー(昨年5月5日の引退式&国民栄誉賞授与式)を見たり、今年また一緒にやったりして新たに感じたこともある。今まで以上に「もうひと頑張りしたい」という気持ちが湧き上がってきたのは事実かな。


 ――高橋選手にとっては“松井効果”もあった


 高橋由:なんか、元気になった気がしますね。


 ――今年は“ゴジラパワー”で、よりハツラツとした姿を見られそうだ


 高橋由:俺が活躍しても、全部「松井さんのおかげ」ってなっちゃうのかよ、クソー(笑い)。