ゴジラフィーバーの陰で緊急事態発生だ。OBの松井秀喜氏(39)の臨時コーチ就任で沸いた巨人の宮崎キャンプは13日に最終日を迎えた。今後は沖縄へと場所を移し、実戦主体の最終調整に入る。そんななか、先発ローテーションの柱として期待される主力投手に故障者が続出。首脳陣は真っ青になっているが、チーム内からは“人災”だと指摘する声も上がっている。

 雨のため木の花ドームでシート打撃が行われた際にアクシデントが起きた。ルーキーの小林誠司捕手(24=日本生命)がはじき返した打球が、投げた内海の左すねを直撃。エース左腕は「大丈夫」というそぶりを見せてしばらく投球を続けていたが、流血していたため宮崎市内の病院へ直行し、傷の縫合を行った。

 病院から戻った内海は「全然、問題ない」と笑顔を見せ、川口投手総合コーチも「裂傷です。長くはかかりません。大丈夫」と軽傷を強調。とはいえ、縫うほどの傷だけに多少の調整遅れは避けられそうにない。

 そしてこの日は、完全復活を期待される杉内も腰に違和感を訴えてシート打撃登板を回避した。二軍調整こそ見送られたが、しばらく様子を見ることになるという。本人は「腰が張ったから大事を取ってやめた。飛ばしすぎたかな」と苦笑いだったが、左腕の二枚看板が出遅れるようだとチームにとっては“軽症”では済まない。

 だが、この2人はまだマシな方だ。今キャンプでは、3日に澤村が右肩不安を訴えて二軍行き。9日には期待の左腕・今村も左肩痛で二軍へ送られた。今村は「沖縄は難しそう。(3月の)オープン戦中には戻りたいと思っていますが…」と話しているだけに、症状は軽くなさそうだ。

 故障と呼べないケースもある。菅野も第2クール中に背中に張りを訴え調整ペースをダウン。この日のブルペン投球も立ち投げだけにとどめた。

 菅野は「開幕がすべて」と焦りを顔に出さないが、順調とは程遠い。先発ローテ候補の5人に何らかのトラブルが発生し、いまだ元気なのは新加入組の大竹、セドンと小山、宮国ぐらい。そんな状況に、現場スタッフは「今の時期にこうでは、今年の投手はダメだね。苦しいシーズンになるよ」と暗い顔でつぶやく。

 同スタッフが故障者続出の原因に挙げたのは、異例のスピード調整だ。原監督の「初日に全力で投げられるように」との指示を守って自主トレからガンガン投げ、1日には全員がブルペン入り。阿部ら野手陣からも「早過ぎないか」と危惧する声は上がっていたが、恐れていた事態が早くも現実になりつつある。首脳陣のパニックぶりも徐々に伝わってきた。原監督は当初、沖縄行き投手を18人としていたが、川口コーチからの要請を受け、この日になって急きょ1人追加。二軍から香月の招集を決めた。

 宮崎での1次キャンプを打ち上げた原監督は、不安の色を見せず「全体的に選手たちは順調にきている。(沖縄では)しっかり観察し、チームをどう組み立てるのが巨人にとってベストか。探りながらやっていきたい」と語ったが、その心中は穏やかでないだろう。これまで華やかなゴジラフィーバーにかき消されていたが、盤石とみられていた投手陣からギシギシと屋台骨がきしむ音が聞こえ始めてきた。